精霊魔法の命令法

大黒天半太

命令は絶対である~とは必ずしも限らない

「我は命ずる。陽鳥シャインバードよ敵を伐て!」

 精霊魔法の遣い手であるジョシュアは、迫って来る敵集団にも怖じけず、詠唱を終えた。

 光るヒシクイが、術者ジョシュアから飛び立ち、目の前に居並ぶ戦士を貫いて行く。

 三人を貫通した所で、ヒシクイは消える。近場の残る敵は三人。


「我は命ずる。陽鳥シャインバードよ敵を伐て!」

 再び詠唱するが、出現した光る鳥はヒシクイより一回り小さいガンだ。

 光るガンは同様に飛び立ち、一人目を貫通した後、二人目に命中し大ダメージを与えた所で消える。明らかに二度目の魔法の方が、威力が落ちている。


 魔力の消費量は変わっていないのに、威力が落ちるのは、費用対効果コストパフォーマンスが下がっている証だ。


 術者自分集中力コンセントレーション魔法制御力コントロールの問題か? 魔力の不足か、精霊への訴求力・説得力の不足か? 二回目の詠唱で何が違ったのか、術者ジョシュア本人に全く実感・手応えが無い。


 精霊との適正な契約が締結されていれば、正しい命令が、精霊に正しく伝わっていれば、その効果は一定のはずだが、そうなっていない。

 師匠に指摘される前に、自分でも納得できていない。


 正しい精霊契約の締結。報酬としての術者の魔力、精霊に求める奉仕とそれを満たす精霊の能力。

 正しい環境、正しい命令、その結果こそが、期待される正しい成果を生むと信じて来たが、何か見落としがあるというのか。

 逆に言えば、何か決定的な見落としがあるからこそ、成果が出ていないのだ。


「ジョシュア、落ち着け」

 師兄先輩のダグラスは、落ち着き払ってジョシュアを宥める。


「精霊を『命令』によって『使役』するのが、精霊術だと師匠マスターから習ったな?」

 師兄に言われるまでもなく、それがわかっているのに、実践できていないからの焦りだった。


「師匠の言葉も、お前の拘りも、一旦、全て忘れろ。お前の精霊との親和力は、誰よりも高い。私より、下手すれば師匠より、な。『使役』とは精霊に仕事をさせることで、『命令』とはどんな仕事をして欲しいかを精霊に伝えることだ。『使役』は『依頼』、『命令』は『対話』だ。まず対話し、精霊と繋がることだけでいい」


 ダグラスの言葉に、何かが腑に落ち、肩の力が抜ける。

 精霊魔法は『命令』だから、精霊に言うことを聞かせようと、言葉に強制力を持たせようとばかりしていた。


「我は命ずる。陽鳥シャインバードよ敵を伐て!」

 私は依頼する。鳥を象った光の精霊よ、私の邪魔をする者達を攻撃しておくれ。

 光の精霊達は、ジョシュアが言葉に載せた魔力に、無邪気に集まって来る。

 ジョシュアの消費魔力量は、むしろ軽くなった。


 ジョシュアの両肩にヒシクイが、伸ばした両腕にガンが三羽づつ現れる。計八羽の陽鳥シャインバードが輝き、目の前の戦士と敵後方の弓士二人と魔法士が眼を眩ませた。


 光るガン四羽が目の前の敵を射抜き、上空に舞うヒシクイ二羽とガン二羽に合流する。


「残りは、私にお任せください」

 少し笑顔になりながら言うジョシュアに、仲間と師兄が頷く。

「任せた!」

「頼むぞ」

「頑張れ!」

「スゲェじゃん、ジョシュア!」


 精霊魔法は、精霊に『命令』し、『使役』する魔法である。

 基本は『対話』だ。

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精霊魔法の命令法 大黒天半太 @count_otacken

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