【短編】十色レンジャー育成計画
羽間慧
十色レンジャー育成計画
面接に行く道すがら、俺は轢かれそうになっていた男の子を助けた。自分が代わりに轢かれることのないよう、転がるように歩道へ逃げた。
たったそれだけで、頭上からゲームでレベルアップしたときのような効果音が降ってくる。
「何なんだ。一体」
俺の疑問に答えるよう、目の前に現れた紫色の小さな球体が現れた。
「赤羽レイジ。きみにはヒーローの素質があるんだルン。ぜひレンジャーの一人になってもらいたいルン」
おぉー! 戦隊ヒーローのスカウトか! 大学生になってから子どものときの夢が叶うとは思わなかったぞ。
どこか魔法少女のマスコットを想起させる口調に違和感を覚えつつも、球体の言葉に胸を躍らせる。
「球体じゃないルン。ナコだルン」
「エスパーかよ! スゲーな、ナコ!」
「えっへんなのだルン」
点滅するように光るのは、喜んでいるらしい。
「レイジには十色レンジャーのリーダーになってほしいんだルン。いろんな個性をまとめるには、レイジの優しさと度胸が必要ルン」
「リーダーってことは俺はレッドか?」
「口上もかっこいいルン」
ナコは空中から出した書類をめくる。
「なになに。『走るイナズマ。はじける飛沫。夏の王様、西瓜レッド!』って、俺のイメージと全然違う! 燃える炎とか、吠える牙とか、もう少しあっただろ!」
「ひどいルン。これから仲間をスカウトしに行くのに、元気なくなるルン」
いやいや、仲間の名前もひどい。夕焼けオレンジはまだマシな部類だ。菜の花イエロー、梅見ピンク、武者インディゴは、名乗りを聞く度に気力が削がれる。後半は紛らわしい名前が続く。青田イエローグリーン、
一番謎なのは初夢パープルのネーミングセンスだ。夢可愛い紫色だから、パープルとくっつけたのか?
「違うんだルン。茄子の妖精ナコがレンジャーに強化戦士として加わるから、初夢の縁起物にかけたルン」
強化戦士なら本来十人いるレンジャーの中に入っちゃ駄目だろ。
「そこは予算の都合でやむなしだルン。面接二十九連敗中のレイジを拾ってあげるんだから、文句言うなルン」
うわぁ。絶対に触れられたくなかったところを土足で踏み込むなよ。
「とりあえず保留でお願いするわ。三十回目で内定もらえるかもしれないし」
「それはないルン。あれを見るルン」
ナコがくるくる回った方向から、煙が上がっていた。怪物の唸り声やガラスの割れる音も響く。
「地球侵略をもくろむユウガイナーが、レイジの受けようとしていた企業の本社を襲撃してるルン。新入社員を雇う余裕なんてないルン」
「そんなの分かんねーだろ! 行くぞ、ナコ! 俺らが力になれるかもしれねー!」
「さすがナコが見込んだレンジャーだルン。ついてくるルン」
愚かなレッドだルンと聞こえたのは空耳に違いない。
十人目の追加戦士こそが黒幕なんてセオリーをぶっ壊しすぎだから。
【第二話 レッドの武器はタネを放つマシンガン!?】
※続きません
【短編】十色レンジャー育成計画 羽間慧 @hazamakei
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