雲の上

餅月 響子

彼女への想い

 ある穏やかな風が吹く春の日

 僕は思いを寄せる彼女に告白の決意をした。

 4月から高校2年になる。

毎朝、同じ車両に乗って、友達と仲良く話す彼女を少し遠くから眺め続けていた。同い年だが、クラスは違う。いつか会話できたら、話しかけられたら、なんて話そうと考えていた。でも、それは夢の夢。彼女には僕の姿を見ることはなかった。魅力がないのかもしれない。好みではないのかもしれない。存在すら分からない脇の脇の脇。脇役でも影が薄い。そう思っていた。


 何も行動しないと何も始まらない。

 意を決して、告白をする。

 でも、どうやって……。


 昇降口の靴箱で、ちょうどタイミングが合った。勇気を出して、声をかける。


「あ、あの……!」


「き、きゃー!! ちょ、ちょっ、ちょっと

待って。八城くんに声かけられちゃった。美鈴、ど、ど、どうしよう」

 

 まさかの反応に、これは自信を持っていいのかと咳払いをする。


「落ち着いて。しっかり話しなよ」

 

「う、うん」


「藤嶋さんだよね。2組の……」


「そ、そうだけど。1組の八城 潤くんでしょう? 私に何か用事あったかな」


「え、えっと、今日の昼休みもし良ければ話したいことあるから、購買部近くのラウンジに来てもらえるかな」


「うん、わかった。昼休みね」


 そう言って、美鈴のところにテンション高めに駆け寄った。僕は、その様子を見込みがあるんだろうかと不安になり、後頭部をガリガリかいた。


ーーー昼休み


「あ、ごめん。お待たせ。約束したの僕の方なのに、遅くなった」

 

 約束時間を5分遅刻した。移動教室の授業で時間通りに間に合わなかった。時間潰しに美鈴と話をしていたらしい。


「あ、んじゃ、美鈴。あとでね!」


「うん。邪魔者は失礼しますよぉ」


「八城くん、気にしないで。さっきの授業が科学室だったんだよね。大丈夫、知ってたからさ。それより話って、何?」


 藤嶋 朱音は、頬を少し赤く早口で喋っていた。本当は緊張しすぎて何を言えばいいのかわからなくなっている。


「あ、うん。そうだよね。話なんだけど、実は、前から藤嶋さんのことが好きなんだけど、僕で良ければ、友達からどうかなと思ってたんだけど、どうかな」


「う、嘘。それって告白だよね。生まれて初めて告白されたよぉ。信じられない。実は私も前からずっと八城くんのこと気になってたんだ。友達からとかじゃなくて彼氏彼女として付き合うのはだめかな」


 声が裏声だった。顔全部が真っ赤で、頬を両手でおさえる。心臓がマラソンしたみたいに早かった。


「えー、あー、うん。願ったり叶ったりかなぁ。ありがとう。よろしく」


 右手を出して、握手をした。まだ夢のような感覚だ。背中に羽が生えたように空に飛んで行ってしまいそう。まるで、心は雲の上にいるようにふわふわしていた。地に足がついていない感覚が忘れられない。


 午後の授業はぼんやりしていて頭に全然入らず、先生にコツンと軽く頭をたたかれた。


「すいません!」


「優等生、しっかりしろよ」


 僕は何度も頭を下げて謝った。今までにない仕草に先生も驚いていた。



【 完 】


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雲の上 餅月 響子 @mochippachi

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