冷蔵庫には要注意
緋雪
冷蔵庫にヤられた日
それは、まだ、私が実家暮らしをしていた頃のお話である。
「ちょっと整形外科に行ってくるわ」
店に出ていた母に電話する。
「なんで? どっか痛いの?」
「いや、骨が折れたっぽい」
「どこの?!」
あまりに落ち着いた声で私が報告したので、母は、めちゃめちゃびっくりしていた。
「左手の小指」
「何しよって?!」
「冷蔵庫あけたら」
「冷蔵庫あけよって、どうやったら骨折れるんな?!」
「えーと。電話で説明するのが難しい。とにかく折れたっぽいから、整形外科行ってくる」
そう言って、私は母との電話を切り、整形外科に行った。
結果。左手小指を骨折していた。
まあ、予想通りだった。
外せるギプス(風呂に入る時には外せる)をつけられ、包帯グルグル。なんか大袈裟な怪我人みたいになった。まあ、骨折してる人は、基本的に怪我人なのだろうが。
何故、冷蔵庫で骨折できるのか?
何か腹立つ事でもあって殴ったか?
いいえ。冷蔵庫を開けただけ。
うちの冷蔵庫(というか、大抵の冷蔵庫)は、右開きである。(取っ手が左側にあって、右手でそこを持って右側に開くのが右開きです)
そして私は、両利きである。
ここに悲劇の原因があった。
私は時々、右開きにしか開かない冷蔵庫を、左手で開く悪癖があった。冷蔵庫のドアの左端のゴム部分を直接持って開けるのだ。
その日も、右手に持ったものを冷蔵庫に入れようと、左手でドアを開けた。まあ、大概の人は左手に物を持って右手でドアを開けるのだろう。が、あまり気にしない質だ。(器用なのかもしれない。いや、あるいは、何も考えてないのかもしれない)
左手で結構な勢いでドアごとつかんで開けたとき、小指が立っていたのか何なのか、左小指が冷蔵庫の側面に残っていた。
「パキッ!」
いい音がした。
「げ」
今の音は確実に折れたなー。困ったなー、ご飯作らないといけないのになー。
何もしなければ大して痛くもないのだが、さすがに調理をし始めると、痛い。困ったなー。
仕方ない。整形外科に行くか。
ということで、冒頭の電話である。
病院で先生に説明するのに難儀した。
「ですから、冷蔵庫のドアを、左手でこう持って、こう右に開けますよね?」
「え? こう右手で持って右に、じゃなくて?」
「そう、うちも右手で右に開けるタイプなんですけど、それを左手でこう、右に開けたんですよ。そしたら冷蔵庫のサイドに小指が残ってて……」
「なんで?」
「うっかり」
「……」
「で、パキッて」
先生がカルテにどう書けばいいものか悩んでいた。
このまま1ヶ月は、お風呂入る時以外は、ギプス外さないでくださいね。お風呂でも使わないように! と先生から念押しされたものの、とにかく手が使えないのは不便で困る。
ついつい包帯を外してギプスだけにして、台所仕事などをやってしまう。そのうち、どうやらくっついたな〜と自分で勝手に判断して、ギプスも外し、通院もやめてしまった。
そのせいか、その後半年ほど痛みが残った。
とにかく。
危険はその辺に転がっているのだな、と思った。
まさかの冷蔵庫。タンスの角とかもヤバい。ドアが開きすぎるのを止めるストッパーなんかも……。
もうちょっと考えて動こう。
そう悟った私なのだった。
「冷蔵庫で手の指骨折事件」
家族や友人の間で、伝説となっている。
※状況が凄くわかりづらいようなので、近況ノートに、説明付きの写真があります。
https://kakuyomu.jp/users/hiyuki0714/news/16818093092636191248
冷蔵庫には要注意 緋雪 @hiyuki0714
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