チャッピー

ハマハマ

 慌てたワタシは父に電話を掛けた。

 折よく手隙てすきだったのか、2コール目に出てくれた。



「お父さん! 大変なの!」


 なんだい落ち着きなさい、なんて電話の向こうでお父さんは言うけど無理だもん。大事件なんだから。


「チャッピーがどっかから拾ってきたみたいで庭に骨が落ちてるの!」


 肉が付いてるか……? いやそんなとこまで見てないけど……


「う、うん。付いてないみたい。ちょっと薄汚れてるけど、ちゃんと白っぽい、骨っぽい骨」


 骨っぽい骨ってなんだよ、ってそんな笑わなくても良いじゃない。分かんないもんは分かんないんだから。


「え? 形? そりゃぁ端っこが二つポコポコって丸くなってて、反対側は……あ、こっちは斜めにポコンって丸いのひとつ飛び出してるよ」


 今度は大きさ? 正確にって、そんなん測ってる訳ないじゃない。


「えっと、長さが……よん……うん、46センチ。太さ? さっきの飛び出した丸いとこの直径が――大体5センチくらいだよ」


 あ、そうなの? これダイタイコツって言うの?

 あぁ、大腿骨ね。太もものとこの。


「大腿骨が? ヒントに? なんのこと?」


 ふぅん。そうなの。身長の四分の一……


「分かってるってば! ダジャレだなんて思ってないよ!」


 4×46してみろって? えーっ、と……


「ひゃく……はちじゅう……よん! 合ってる?」


 あ、そっか。それくらいの身長の人のダイタイコツってことなんだ。もちろん個人差……そりゃ足の長い人もいるもんね。


「吉田さん? うん、知ってる。チャッピーの散歩の時によく会う背の高い人」


 チャッピーのこと可愛がってくれる犬好きの人だよね。


「それがどうかしたの?」


 ――! うっそ、ホントに?


「これ骨だけの魔物スケルトンの吉田さんのなの!?」


 多分ね、ってそんな簡単に。

 ……そうなんだ。お父さんの整骨院に『骨ひとつ見当たらないから予約パス』って連絡あったんだ……


 なら吉田さんのかもね。


「どうしたら良いの? 届ける?」


 絶対困ってるよね。一刻も早く届けた方が良いよねきっと。


「あ、そっか。脱臼なんてわたし治せないね。うん、分かった。置いとく。――うん。――了解」




 父との通話を終えて、吉田さんの大腿骨をぺろぺろ舐めてるチャッピーに注意する。


「吉田さん骨粗鬆症気味らしいから噛んじゃだめだよ!」


 チャッピーのよだれまみれになっちゃった骨。

 なんか悪いし拭いとこうと思って雑巾持ってきたものの、考え直してタオルで拭いて玄関に入れといた。


 わたしもお父さんと同じ専門学校にしようかな、進路。

 結構あちこちいるもんね、スケルトンの人。



(おしまい)



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チャッピー ハマハマ @hamahamanji

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