彼女が出てくってよ

白川津 中々

◾️

「なんで一緒に住んでるんだっけ」


瑠美にそう言われて、何も答えられなかった。


働いて、帰ってきて食事をして、特に話す事もなくシャワーを浴びて寝る毎日。触れ合う時間もこのところない。一緒にどこかへ出かけたり部屋で映画を観たり、そんな当たり前なこともしなくなっていた。


「……ちょっと、距離置こうか」


黙りこくる俺を見かねたのか、瑠美は一言落として部屋を出て行った。既に荷物はまとめてあったから、最初からそのつもりだったのだろう。一人となった部屋、ソファに座り、考える。これでよかったのか。このまま別れてしまって後悔はないか。寂しくはないか。本当に、これでいいのか。


……


俺は部屋を駆け出し瑠美を追った。


「瑠美!」


マンションの下、街路樹が並ぶ静かな歩道。これまで二人で歩いていた道で、瑠美を呼び止める。


「……なに?」


無表情な彼女を前にして俺は一息吸い込み、声いっぱいに吐き出した。


「出ていってくれてありがとう!」


「……はぁ?」


「生活費全部俺が出してるし炊事家事洗濯も俺の比率が異様に多いし休日は風呂も入らねー歯も磨かねーでゴロゴロしくさるしあげく全然やらせてくれねーしまじどうしようかなって思ってたんだよ! 本当にありがとう! 感謝しかない! 謝、謝、謝! 感謝!」


「……」


「今日から久々のお一人様ライフ満喫しまーすイェーイ!」


「……」


「あ、まだいたの? さっさと実家にでも帰ってくれ! さよなら!」


「……」


「なに震えてんだよー 寒いの? 早く帰った方がよくない? じゃ、俺はもう戻るからね! 早く帰るんだよ!」


「死ね!」


瑠美の平手を華麗にかわしてボックスステップ。ホップステップジャンプで元来た道を戻りシャンパンを開けた。楽しみしかないこれからの毎日。明日からがもうパラダイスだ!



と、思っていたが瑠美は戻ってきた。「出てけよぉ」と言っても「出ていきませーん」だと。ほんと、こいつなんなんだろう。



でも週一でさせてくれるようになったから、一旦いっか!

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