過去を背負いながら、親子で掴む優しい再出発の物語。

『サレ妻が推しに娘ごと溺愛されるなんて!!』レビュー
── 傷ついた過去から、人生の主役へ──
レビュアー:ひまえび

『サレ妻が推しに娘ごと溺愛されるなんて!!』は、一見すると“よくある溺愛系”のタイトルに見えるかもしれません。しかし実際に読んでみると、その中身は想像以上に繊細で、そして丁寧に作られた物語だと感じました。

まず、主人公・りさのキャラクター造形が非常に現実的です。
ただの“可哀想な被害者”ではなく、自らの過去を受け入れつつ、娘のために前を向こうとする強さがある。にもかかわらず、その芯の強さが決して押し付けがましくない。自然で、じんわりと滲むタイプの強さです。

そして“推し”という存在の使い方が上手い。
ただの恋愛対象ではなく、りさにとっての“憧れ”であり“夢”であり、“もう一度自分を信じていいと思わせてくれる希望”として描かれている。
「推し活」が現代の癒しや救いになっているという社会的なリアルも、物語の芯にしっかり根付いていました。

娘との関係も非常に大きな見どころです。
娘を連れての恋愛、再婚、母としての葛藤など、本来なら重たく描かれるテーマにも関わらず、本作はあくまで読者に寄り添い、気持ちよく読めるバランスを保っている。これは筆者の力量によるものだと感じます。

誇張もあるけれど、それはあくまで「心の回復」をドラマティックに描くための演出であり、逆にその演出が“感情のカタルシス”として効いています。

結論としては──

「こんなふうに報われてほしい」と願わずにはいられない。
そんな登場人物たちに出会える、誠実な再生物語でした。

私はこの作品を、単なる恋愛ジャンルにとどまらず、「癒しと回復のドラマ」として真摯に受け止めました。もう一度読み返したいと思う作品の一つです。