骨が無い部分は化石に残らない

XX

古代人にも譲れないものがある

「で、どんな状況なんですか?」


 私は霊能力のある探偵で、通常の探偵業務の他に、こうして霊現象が関わる事件の依頼も受けている。


 人呼んで霊感探偵。

 ちなみに臨死体験をしたことは一度もない。


「はぁ、困り果てておりまして」


 依頼人は、都内の博物館の職員さんで。

 博物館で霊現象が起きて、困り果てているらしい。


「ホープダイヤでも展示されたんですか? もしくは座ると死ぬという独裁者の椅子とか」


 私は思い付きだが、あり得る予想を並べてみた。

 文化財には呪われているものもあるからな。


 だが、職員は首を左右に振った。


「そういったものは無いはずなんですよね……それに」


 霊現象が起きているのは、そういう文化財コーナーじゃないんですよ。


 ……どういうことだ?




 話によると、1万と2000年前の地層から発掘された原始人の化石を組み立てて復元した像を展示しているエリアらしいんだが。


 何故か、そこで霊現象が起きているらしい。


 ラップ現象だとか。

 ポルターガイスト現象だとか。

 突然の体調不良だとか。


 気味が悪いので、客が寄り付かず、他のエリアにも影響が出ているらしい。

 何故なのか?


 理由が分からない。


「とりあえず、現場を見てみましょう」


 私は現場に行ってみることにした。




 行ってみると、化石から復元した原始人が展示されていた。


 原始人は化石を組み上げられて、そこにさらに、樹脂か何かで肉まで復元されて。

 生前の姿を示されていた。


 1万と2000年前なら、全裸なんじゃないのかな?

 素人考えだが、その頃は服の概念無かったりしないか?


 なんとなくそう思ったんだけど、全裸はまずいからか。

 腰ミノをつけられていた。


 ……男性だったんだよ。

 展示されていたの。


 ……特に別に変な展示じゃ無いんだけどな……


 なのに何だ……?

 この邪気は?


 そう……この場所には瘴気が満ちていた。




 理由は分からないが。

 今、この場には呪いの感情が満ちている。


 怒り、憎悪、屈辱……。


 あらゆるマイナス感情が。


 ……分からない……


「どうでしょう?」


 職員の人は、不安そうに、そして期待を込めて聞いてくる。

 ……プレッシャーがあるな。


 霊感探偵として売っている私は、伊達にあの世の住人を相手にしてきたわけではない。


 ……奥の手はあるんだ。


「……ちょっと、ここにいる霊たちと対話をしてみます」


 少し、意地になっていた。

 ここまで来て「良く分からない」とも言えないしな。


 少し危険だが、私は自分の中に霊を迎え入れ、その想いを確かめようと思ったんだ。


 数珠を取り出し、手を合わせる。

 そして経を唱えて……


 そこで、私の意識が途絶えた。




 ……次に気が付いたのは、病院のベッドの上だった。


「気が付きましたか!」


 ……博物館の職員の人が安堵の表情で駆け寄って来る。

 どうも、3日間ほど眠っていたらしい。


 ……そして。

 私はあの後、どうも憑依されて……


 あの原始人の復元像に飛びかかり、ぶっ壊したらしかった。


 私に憑依した霊は、あの像が憎かったのか。


 ウホホホ、ウホホホ!


 ……憑依の瞬間、私の脳裏にそんな言葉が聞こえた気がする、

 あそこにいたのは、原始人の霊だったのか。


 何故原始人は、復元像を壊したかったのか……?


 自分の生前の姿を晒し物にされることを、屈辱だと思ったのだろうか……?


 分からなかった。


 だが……


 数日後、同じ年代の地層から、岩塩の塊が発掘され。

 その岩塩の中に、新鮮な原始人の死体が複数体封入されていたことで。


 私にはなんとなく理由が分かってしまったんだ。


 その、原始人たちは

 もれなく、アレがでかかったんだ。

 そのサイズは、ペットボトルくらい……


 ……化石って、骨が無い部分はまず残らないからね……。

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骨が無い部分は化石に残らない XX @yamakawauminosuke

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