無敵で最弱な魔王魔王を辞めて冒険者になる!
アイギス
俺魔王辞めます
「魔王! ようやく見つけたぞ!」
金髪の正義感あふれる瞳をした勇者がまた一人、僕の城へと仲間を連れてやってきた。
そんな彼らを僕が一瞥していると、自分の体よりも大きな盾を持ったタンク役の大男が、一歩前に前進してみんなを守る体勢をとり警戒している。
その大男の後ろから、青髪の魔法使いの少女と回復役担当であろう、緑髪のエルフが身構えていた。
僕の配下にも一人、少女のような見た目をしているエルフがいるが、実年齢は見た目とは全く違い、なめてかかると痛い目を見ることになるだろう。
そして最後方に見える茶髪の大きな胸が特徴的なお姉さんは、聖職者の服装からしてバフ担当なのだろう。
前衛後衛ともに、互いの弱点をカバーしあえる仲の良い、パーティーに違いない。
「ふははは……よく来たな勇者達よ……」僕は大げさに手を広げ彼らを歓迎した、すると勇者ならではのお決まりのセリフを返してくる。
「お前を倒してこの世界を俺たちは救う!」だから僕もお決まりのセリフを返すんだ……
「さぁ! 見せてみろ! お前達人間の力を!」
僕には結果が見えている、もううんざりするくらいに同じような経験してきたからだ。
「はぁ!!」かけ声と同時に勇者は、力を込め僕の胸辺りを狙って剣を振るった、剣先が僕に届くと同時に、衝撃波が起こり城内が激しくゆれる。
勇者の一太刀目が僕に当たると、他のメンバーたちも攻撃を始め、魔法使いの少女が放った火の玉が僕に当たると火柱を上げながら爆発した、やはり結果は僕が予想していたどうりだった。
「バカな……魔人すらも倒すことができた俺たちの攻撃が、なに一つも効いていないというのか!」エルフの杖が地面に落ち、遠くまで転がっていった。
「あの噂は本当だったの!?」エルフの発言に釣られるかのように、聖職者のお姉さんもまた動揺している。
「無敵かもしれないってやつか?そんな噂があってたまるかよ! ふざけるな!」勇者が片足でコツコツと地面を叩く。
「だけどあいつ、俺たちがこれだけ連携攻撃したというのに、見てみろ!かすり傷一つすらついていないじゃないか!」勇者をのぞいて他のメンバーは動揺を隠せずにいる、そんな彼らに痺れをきらしたのか、勇者が大声を出しメンバーに命令した。
「もういい! お前らは下がってろ!」勇者は顔を真っ赤にし、自分の持っている剣にありったけの魔力を注ぎ込みだす、それと同時に青い光のようなものが彼を中心に浮遊しだす。
「やめてアルウェン! それ以上魔力を注ぎ込み続けたら、あなた死んでしまうわ!」女魔法使いが勇者を止めようと手を伸ばすが、彼の放つ風圧によって彼女の細い手は簡単に弾き返されていた。
「例え、俺がここで死のうとも! お前だけは道連れにしてやる!」例えどんな手段を使おうとも、魔王である僕を倒すという、強い意思がピリピリと大気中の空気から伝わってくる。
やめておいた方がいいのにな……
僕は心の中ではそう思いつつも、一応魔王としての立場があるし、彼の覚悟を尊重しようではないか!
「はたしてその攻撃、我に効くかどうか確かめてやろう、さぁ何処からでも放ってみよ……」僕は両手を大げさに広げて勇者を挑発した。
「俺はお前を!必ず倒す!」先程まで浮遊していた青い光が彼に集結すると同時に、勇者の剣が蒼い光を纏い凄まじい闘気を放つ。
「ここでお前を倒さなければ、人々の平穏は守られない、正義が負ける? そんな事は天地がひっくり返えろうとも、あってはならない! 我が一族の名にかけて貴様を討つ!」勇者の目に黄色い紋章が浮かび上がる。
「我が一族の奥義を受けてみろ! 正義の怒り《セイバーブレイド》!!」
「ド――ンッ!!」
眩い青い光が僕を包み込んでゆく、うん……確かに凄い威力だ、今まで出会ってきた勇者の中でもトップクラスの火力だろう、城内に土煙が舞い上がる。
聖職者が両手を胸の前あたりで握りしめながら呟く「ねえ?やったの?」そんな彼女の声質は期待と希望に満ちあふれていた。
この展開いつも気まずいんだよね、本当はここでやられてあげたい所なんだけどさ、ごめんよ……僕は土煙が上がると服についた汚れをはらい落とし、彼たちに無傷アピールをしてみせた。
「そんな……馬鹿な……」勇者が膝から崩れ落ちる。
「勇者よ、貴様の奥義とやらはこの程度か?」勇者の目からは光が消え俯いたまま動かなくなっていた。
「くそ! お前達は一旦逃げろ! ここは俺が足止めする!」タンク役の男が皆を逃がすため、大盾を構えて前に出てきた。
「だめよディール!皆揃って帰るって昨日約束したばかりじゃない!アルウェンもディールを止めてよ!」勇者は両手をだらりととさせながら、よどんだ表情を作っていた。
「しっかりしろよ!アルウェン!お前が絶望してどうするんだ!皆を……任せたぞ!」大きな盾をがっしりと構え、強気の姿勢を見せてくる。
「ディール……俺は……俺は……もう駄目だ……」勇者は体を前後に揺らしながら、自分の両腕をさすっていた。
「みんな早くしろ!アルウェンを連れていくんだ!」
「アルウェン!お願いだからディールの覚悟を無駄にしないで……!」青髪の魔法使いが必死に項垂れている勇者の手を、涙でぐしゃぐしゃになった顔をしながら引っ張っていた。
「アルウェン……お願いだから動いて……!」聖職者も加わり二人で必死に勇者の手を引っ張り、その場から少しずつ扉へと後退していく。
「みんな!今までありがとう……!俺はお前たちと冒険できて幸せだった!」ディールは拳を上に掲げみんなを見送った。
「さぁ!魔王!ここから先は俺の命が尽きようとも絶対に進ませはしない!」ディールは盾を構えて僕の前へと一歩一歩向かってくる、そんな彼の足取りからは覚悟や使命感というのだろうか、そんなものが伝わってくる。
「興がさめた、今回は見逃してやる帰るといい……」目の前でこんなの見せられて、彼をどうにかしようだなんて気はまったく起こらない、それに僕の力じゃこんな硬そうな盾、どちらにしろ絶対突破できないしさ。
「は? 俺を殺さないのか?」ディールは胸の前で指を大きく開き、口をぽかんと開いていた。
「先程の勇者に伝えておけ、熟練された良い技であったと」それにしてもあの威力、僕以外の魔王が受けてたら多分、普通に倒されてたんじゃないか?
「くそっ! 感謝はしないからな!」
「もちろんだ……」
未だ警戒をしているディールは、盾をがっしりと構えたまま部屋の入口に向かい、辿り着くと同時に仲間の元へと走り去った。
「とりあえず……これで一件落着かな?」久々に胸刺さる感動劇を見た気がするよ。
そうそう!どたばたで自己紹介がまだだったね!僕の名前はクロロム・ハイメルツ、百〇〇年ほど前に、父が勇者によって討伐されてしまい、それからは僕が父に代わって魔王をやっている……というか流れてきにやらされている。
この百〇〇年間で勇者たちは何度も僕に挑戦してきたけれども、未だにかすり傷一つもつけられたことがない、僕は生まれた時から無敵だった。
その特質からか僕は周りから、
僕が魔王になってからは、配下全員に無駄な殺しはしないように命じている、まぁそのせいで僕の配下はほとんどいなくなってしまったけどね!
最近同じ思考が脳内でぐるぐると周り続ける、もうさ……ぶっちゃけ魔王やめたい……!
僕には小さな頃から夢がある、父には決して許される事の無かった夢、それは冒険者になって世界中に眠っている宝具を集め、収集することだ!
「クロロム様!!この部屋は!?」突如僕の後ろから、ハスキーボイス風な女の子の声が聞こえてくる、どうやらヴァルメラが帰ってきたようだね!
僕は三日ほど前ヴァルメラに、ラーデン洞窟奥地にあると言われている刀状の宝具、雷斬り《らいきり》の入手をお願いしていた。
「あぁ、うん……いつもの勇者御一行様! 魔王討伐ツアーがあったのさ」僕は人差し指を立て説明した。
「人間どもめ……クロロム様の事をなにも知らずに、何度も攻めてきやがって……次攻めてきたら殺してやる……」
目の前にいる彼女はヴァルメラ種族は竜人、その容姿は美しい赤い髪とルビーのような瞳を持ち、自信に満ちた美しい顔立ちをしている、スタイルがよく日頃トレーニングをしている事もあってか、腹筋が少し割れている。
純粋で努力家で戦闘好きな性格をしている、そんな彼女は別名紅蓮の
「駄目だよ、ヴァルメラ!彼らにだって攻めてくる理由がきっとあるんだよ!」
「ですが!クロロム様……このままやられっぱなしでいいのですか!」ヴァルメラは悔しそうな表情をうかべていた、彼女は昔人間とは色々あったしその名残がまだ残ってるのだろう。
「そういえば!ヴァルメラ雷斬りはあったかい?」
「はい!こちらに」
「おぉ!ありがとう!大変じゃなかったかい?」
「雑魚ばかりで退屈でした!」あそこの洞窟に出るモンスターって確か、まぁまぁ強いはずなんだけどね……
それにしても……宝具は素晴らしい!宝具こそ神!宝具こそが全て!宝具!宝具!宝具!僕はじっくりと雷斬りを堪能しユグドラシルの中へとしまった。
ユグドラシルは非常に便利な宝具で、僕が取り出したい宝具を指示すると、空間からその宝具を出現させてくれるまた、宝具を集収する事もできる大変便利な宝具だ。
「そういえばヴァルメラ……」
「はい?次の依頼でしょうか?」
「あぁ、いや……今回は宝具の話じゃないんだ」
「最近さヴァルメロの姿を見てないんだけど、知らない?」
「ヴァルメルならずっと、クロロム様の影の中でニート生活してると思いますよ?」
「へ?」あまりの驚きに魔王らしからぬ、間抜けな声を出してしまった。
「え?」ヴァルメラもしっかりと反応してきた。
「あっ、あぁ、もちろん気づいてたさ!ちょっとした冗談だ!」僕は堂々と胸を張り誤魔化すことにした。
「こほん……おーい、ヴァルメロ」僕は自分の影に向かって彼女の名前を呼んだ、なんというか自分の影に声を掛けるなんて不思議な気持ちだ。
「はーい……」彼女は眠そうな声で僕の呼びかけに応答した。(ホントにいたよこの子……)
「よいしょっと……」僕の影に波紋が広り、彼女はゆっくりと這い出てきた。
「おはようございます、クロロム様……」大きなあくびをしながら挨拶してくれた彼女の名前は、ヴァルメロまたの名を、‘蒼穹の戦乙女’《ソウキュウのワルキューレ》なんて呼ばれてる。
その容姿は穏やかな海を連想させるかの様なサラサラとした美しい髪、薄紫の瞳をしており、顔立ちは良いがいつも眠たそうにしている、戦闘好きな姉のヴァルメラとは正反対で、全てにおいてやる気のない性格をしている。
「どうかしました……?」彼女は小さな首をちょこんと横に倒し、無垢な瞳で僕の目を見つめてくる。
「おはようヴァルメロ、僕の影の中は寝心地良かったかい?」影の中ってどんな寝心地なのか正直気になる……
「たまに深夜揺れてるけど、基本的には最高の居心地ですよ……」
「ゲホッ!ゲホッ!へ、へーそうなんだそれは良かった!うんうん……」
(この話題はよくないのでこの変にしておこう……)
「ドンッ」城内に大きな音が鳴り響く、どうやらヴァルメラがヴァルメロに向かって蹴りを放ったようだ。
「何するの?お姉ちゃん……」彼女はヴァルメラの蹴りをひらりと身をかわし、大した事ないねと言わんばかりにわざとらしく、小さな口で大きなあくびをしていた。
「そういえばてめぇヴァルメロ!クロロム様のそばにいながらどうして、人間と戦わなかったんだよ?なめてんじゃねぇーぞ?」ヴァルメラが首の骨をポキポキと鳴らしだす。
「えー、だってクロロム様があんな奴らに負けるわけないじゃん?それともお姉ちゃんてばもしかして……クロロム様が負けると思ってるの?」眠そうに目を擦りながら返答している、もはや怠惰という言葉は彼女の為に存在しているのかもしれない。
「はぁ?流石にお前状況考えろよ?仮にも勇者達が攻めて来てるんだから、もしもってもんがあんだろ!」ヴァルメラは奥歯を噛み締めながら、今にでも襲いかかりそうな勢いでヴァルメロを睨みつけている、当の本人は何知らぬ顔でもう眠気の限界が来たのか、両目を閉じてフラフラとしている。
「まぁまぁヴァルメラ……僕は大丈夫だから落ち着いて!」僕はヴァルメラをなだめたが、ヒートアップしている彼女には僕の声は聞こえていないようだった。
「聞いてんのかよ!ヴァルメロ!!ドンッ!」彼女が地面を感情剥き出しにして蹴る、その威力は凄まじく城の床から壁の上の方まで大きな亀裂が走っていった。
「お姉ちゃん……そんなに怒って疲れないの?」ヴァルメロがしかめっ面を作り、声のトーンを少し落として姉に睨み返していた。
「てめぇ……ヴァルメロ……ぶち殺す!」
「やれるもんならやってみなよ、脳筋クソお姉様!」ニコッとヴァルメロが悪意のこもった笑みを浮かべ挑発した、その瞬間ヴァルメラが彼女に殴りかかる。
「ドンッ! バンッ! ガシャーン!」城内の柱という柱、壁という壁に大穴が空いていく。
「お願いだから二人共!僕の宝物庫だけは壊さないでね!」ユグドラシルにも収集できる限度があり、収集できない宝具は城の宝物庫にしまい込んでいるのだ。
(ダメだ全く聞こえてないヤツだ……もうこれ……勇者御一行様より被害出てるくないか……?)
僕クロロム・ハイメルツには大きな秘密がある、決して誰にも悟られてはいけない秘密が……
僕は生まれつきいかなる剣技や魔法、毒や呪いなどなにをされても効かない、これだけ聞くと無敵で最強じゃないかって思われるかも知れないけど、僕は産まれたときから、攻撃系統の全てにおける魔法やスキルが一切使えないのだ。
それなら魔法やスキルが一切使えないのか……?と言われるかもしれないが決してそういう訳ではない、攻撃系統が使えない代わりに、ヒーリングスキルだけは何故か使えるんだよね……
自慢する気はないけどこの世界で呪いを解くことができるのは、きっと僕だけだと思う……せっかくどんな攻撃を受けても傷つかない特質なのに、攻撃系スキルじゃなくて、回復系スキル特化だなんてもはや何かのバグだろってツッコミたくなるよ……
魔王としての威厳をみんなに見せつけないといけないうえに、僕の秘密を知れば他の魔王たちもこの城に進行してくるかもしれない……年がら年中ストレスで胃が痛くなるよ……
「ドカーンッ!殺す!殺す!殺す!ヴァルメロ――!!」初めはキレて殴りかかったヴァルメラだけど、怠そうにしているヴァルメロに満面の笑みを浮かべながら殴りかかっていた、どうやら彼女の戦闘魂に火が付いてしまったようだ……ラーデン洞窟の物足りなさも上乗せしているのかもしれない。
「殺す、殺すってそれしか言えない、低能なお姉ちゃんに一言……お前が死ねよ!!」普段眠そうな表情しか浮かべていない彼女の顔に、今では怒りの表情がうかがえる。
「二人共!もう辞めてくれ!僕の宝物庫に近づいていってるから!」
「ヴァルメロー!!!」ヴァルメラの拳にありったけの魔力が込められる。
「ヴァルメラー!!!」ヴァルメロの小さな拳にも彼女同様にありったけの魔力が込められる、どうやら次の一撃で決着をつけるつもりだろう。
「やーめーろーおぉぉぉぉーーー!」僕は必死に姉妹に向かって手を伸ばした、時間にすればほんの一瞬の出来事だけれども、僕には永遠に時が続いているような錯覚に囚われていた。
「ドカンッ!!!」ありったけの魔力が込められた拳がぶつかりあう、その瞬間白い光が広がっていき次々と城の柱がのみ込まれ崩壊していった……
「ガシャーン!!ガラガラ……」城が完全に崩れ落ちたと同時に、僕の心も崩れ落ちていった。
「うわあああああああああ!!!!」
僕はありったけの声量で頭を抱え膝を崩しながら叫んだ、火山に生息しているフレイムドラゴンと張り合える程のボリュームで。
僕の断末魔を聞いた彼女たちはようやく、この城の現状に気が付き我に返ったようだ。
「その、クロロム様……ごめんなさい!!」二人は申し訳無さそうに、ショックのあまり床に寝そべっている僕に謝罪した、宝物庫も先程の白い光に包まれて完全に崩壊していた。
「僕の宝具が……僕の命の根源が……」こそこそと集めていた大切な宝具たちが全て城の瓦礫に潰され無惨な姿になっていた……
(僕が力不足なせいで……みんなを守れなくてごめん……)
「な、なんですか!?この状況は……」声がする方向に顔だけを向けると、そこには近くの村に出かけていたシエスタが、買い物カゴを盛大に落としている姿がうかがえた。
そんな彼女の名前はシエスタ、白と黒のメイド服をいつも纏っていて、その容姿は美しい白銀の長い髪、赤い月を思わせるような瞳、すらりとした抜群のスタイルを誇り、顔立ちも整っている。
彼女は目が少し悪いようで、黒ぶちのメガネをいつもかけている、几帳面で責任感が強く、世話好きな性格をしていて僕はいつも彼女に助けられている……というか、僕は彼女に飼われていると言ったほうが適任かもしれない。
彼女は万能でなにを任せても完璧にこなす最強メイドである、そんな彼女の戦力は僕以外にも六人魔王がいるけど、本気を出せばシエスタ単体で全員と戦える程の魔界イチの実力者だ。
そんな彼女の本当の実力は僕以外の誰にも知られていない、シエスタには僕の身の回りの世話をしてもらいあえて目立たない様にしているのだ……それが彼女にとっても幸せな事だから……
「ごめんね、ちょっと今回の勇者たち強すぎてさ、お城壊れちゃった……」
(ごめんよ勇者……僕にはこういうしかなかったんだ)
僕は勇者一同に心の底から謝罪した。
「懲りませんねほんと……勇者ギルドの本部に乗り込んでやりたいところです!」そう言ってシエスタは、メガネを指先で少し上に上げた。
「あぁ、それは駄目だよ!シエスタが行ったらギルド協会どころか、人界を滅ぼしかねないからね……」
「もちろん冗談です!ですがクロロム様わかっているのですか?」シエスタは崩壊した城の瓦礫を拾いながら言った。
「うん?」何の事だろう、僕は不思議そうな顔を作ってシエスタの目をじっと見つめていると、気まずそうに目をそらされてしまった、若干顔も赤い気がするしそれ程にやばい事なのかな?
「クロロム様が後継ぎになられてからと言うもの、何故か分かりませんが!経済が極端に悪くなり、あれだけあった資金もあと少ししかないという現状をです!」
「え?そんなに悪いの!?」僕はこれでもかと言わんばかりに、大袈裟に両手を上げ物凄く驚いているかのように演じてみせた、心当たりがあるというか、犯人は僕なのだ……
魔界と人界両方に属さない中立国、ヒューズ王国では年に1度宝具オークションが開かれる、そこでは全世界から集められた、ありとあらゆる宝具が出品されるオークションで、僕はシエスタに隠れて毎年そのオークションで宝具を競り落としていたのだ。
「そうですよ!残りの資金からしてもう城の再建築は無理かと……」
「そ、それはやばいね……」僕は額からにじみ出てくる汗を拭った。
「んー?これって……」
シエスタの視界に入ってはいけないものが入ってしまった。
「なんなんですか?この砕け散った宝具の山は!まさか……資金の減り方がおかしいと思えば……」
シエスタがメガネをくいっと上げて僕に近づいてくる。
(まずい……!)
「あー!そうだ、僕ちょっと隣の国まで行って、城の再建築融資をして貰えないか聞いてみるよ!」
「他の領地に手を貸してくれる魔王がいるわけないじゃないですか!」
「うーん、一人心あたりがあるんだよね!」
「心当たり……ってもしかして……!エリザベス様じゃないですよね?駄目です!絶対に!それだけは許しません!!!」彼女は壊れた城を見たときよりも慌てていた。
「エリザベスじゃなくて、ギーベルに頼もうかなって!」僕と魔王ギーベルは師弟の関係である、師弟って言っても一〇〇年程前、ギーベルに突如戦いを挑まれ父の命令によって僕は嫌々戦う事になった。
僕はギーベルの攻撃全てを無傷で受け止め、僕から一切彼に攻撃をしなかった事から、彼は勝手に僕が手加減をしていると思って降参し、そこから僕の事を師匠と崇めるようになった。
「ギーベル様というと魔王序列三位の?」
「そうそう!」彼女は僕が頷くと、安堵の表情を浮かべていた、エリザベスとなにかあったのだろうか?
魔界には魔王序列というものがあり、国全体の力や魔王本人の力によって序列が決まる、高ければ高い程魔界での発言力を持つことができる、僕の弟子?ギーベルは魔王序列三位のちゃんとした実力者なのだ。
「その、ですがクロロム様……いくら師弟関係とはいえ、他の魔王に貸しを作ってしまうというのは、魔王としての立場に影響がでてしまうかと……」
「そうかな、うーん……」
(城が無くなって弱ってると思われたら、ギーベル以外の他の魔王に侵略とかされちゃうかもしないし)
八方塞がりな状況が長年考えていたことを実行に移す後押しをしてくれた……そうだ!これはチャンスかもしれない!この状況なら僕が魔王を辞めて冒険者になって宝具集めの旅に出たとしても、みんな許してくれるんじゃないか!?
「決めた、シエスタ!もうこの際さ城も崩れちゃったし、正直僕もう魔王飽きちゃったんだよね!」
「はい?今なんと?」シエスタがかけているメガネの位置が左側に大きく傾く。
「宣言する!僕クロロム・ハイメルツは魔王をやめて冒険者になる!」
「え――!?」それを聞いたシエスタは泡を吹いて地面に倒れ混んでいた。
「おおー!流石クロロム様です!!」ヴァルメロは床で寝てたけど、ヴァルメラははしゃぎまわっていた。
魔界では、四六時中クロロムの話題で騒がれていた……
「おい! お前聞いたかよ!」
「あぁ! 聞いたよ! 現魔王ランキング一位のクロロム・ハイメルツが自ら魔王の座を手放したって!?」
「くぅー!つまり魔王の席が一つ空いたって事は、これから魔王の座を争った戦いが起こるって事だ!」
「魔界貴族のガンドロフは、間違いなく魔王の席を狙って来るだろうな」
「それを言うなら、輪廻のルーベルツだってヤバいぞ!」男は興奮してテーブルを叩きながら言う。
「これから魔界はお祭り状態だな! 俺も力があったら魔王になりてぇー!」
「お前じゃ無理だよ、はっはっはっ!」
「そりゃそうか! だぁっはっはっ!」
勿論!この騒ぎは全魔王達の耳へと届いていた……
「ギーベル様ー!」ギーベル城では長い廊下を息をきらしながら走っている白髪頭の老人の魔族がいた。
「リグルドそんなに息をきらしてどうした?」赤髪の魔王が白髪頭の老人に問いかける。
「ぜー……ぜー……ゲホッ、ゲホッ……」
「とりあえずリグルド水でも飲め!」
「あ、ありがとうございますじゃ……」ギーベルから手渡されたグラスに入った水を一口で飲みきった。
「それで、リグルド何があった?」
「それがどうやら……聞いて驚かないでください……」
「なんだ!早く言え!」
「でわ、元魔王クロロム・ハイメルツは現在……魔王の座を捨て、人間界で冒険者を始めたそうですじゃ!」
「なんだと!!師匠が魔王を辞めただと!」
「はい……魔界ではもうお祭り騒ぎ状態になっておりますじゃ……」
「師匠ー!!なにをお考えなのですかー!!」ギーベル城ではギーベルの叫び声が鳴り響いていた。
そう!これは無敵すぎるがゆえの苦悩で?いや!宝具を集めたいという理由で、魔王序列1位の座を捨て冒険者に転職する、とんでもない元魔王の冒険物語である!頑張れ!シエスタ!負けるな!シエスタ!クロロムのこれからは君にかかっているー!!
無敵で最弱な魔王魔王を辞めて冒険者になる! アイギス @ato25630
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