薔薇色の少女は棘をもたない

一陽吉

魔導士の少女

「そこまでです」


 上品で凛とした声を出しながら、一人のお嬢ちゃんが俺の前に現れた。


 歳は十五といったところで背格好もそんなかんじだが、着てる魔導服は真っ赤。


 しかも髪は艶やかな白でありながら毛先が桃色になってやがるし、短めでふわっとしているから、薔薇みてえなもんになってる。


 ちょいと個性的だが、美少女なのは間違いない。


「勇ましいこってすな、お嬢ちゃん。だがな、こちとら愉快な山賊さん。奪わなきゃ俺らが食いぱっぐれちまう。おとなしくしてくれりゃ命まではとらねえよ。もっとも、美人さんは高値で売れるからご同行願うがな」


「あなた方の理不尽な要求を受け入れるつもりはありません。今後、商隊が襲われないように拘束させていただきます」


「言うねえ。自分がやられるなんて微塵も考えてねえ。だがな、魔導士さんは魔法を使ってこそ強えが、魔法が使えなきゃただの人なんだ、ぜ!」


 言い終わるのと同時に右手のこん棒をお嬢ちゃんに向かってぶん投げる。


 怯ませて魔法を使わせねえのが目的だから当たりはしねえ。


 そのすきにお嬢ちゃんへ一撃入れて気絶させるんだ。


 がたいのいい大男が素早く動けるなんて誰も──。


「!?」


 なんだ。


 俺の身体から花びらが飛んだ?


 それもお嬢ちゃんの髪みてえな薔薇の花びら。


 それが二十本ぐれえ同時に咲いて散ったかのように舞っている。


 そして、力が抜ける。


 跳び出そうとした足がよろよろとした足取りになって、両膝が地面に落ちる。


 抜けるのは筋力だけじゃねえ。


 頭の方もだ。


 あああ……。


 何も、考えられねえ……。


「わたしの魔法は瞬間発動し、相手の戦闘力と戦意を消失させます。人を傷つけるものではありません。あなた方は裁きを受け、きちんと罪を償ってください」


「……」


 ──こうして、俺をかしらとする十人の愉快な山賊はお嬢ちゃんによって無力化され、商隊の護衛に捕らえられた。


 あとで知ったが、お嬢ちゃんの名はジュミリア。


 薔薇魔導士隊とかいう女だけで構成された魔導士集団の一人らしく、隊員はみなあの真っ赤な魔導服を着てるようだ。


 やれやれ。


 きれいな花には棘がある、なんて言葉があったが、そのとおりひでえ目にあった。


 刑期を終えて街に戻っても、薔薇みてえな美人の女には気をつけなきゃならねえな。

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