薔薇色の人生だった

仁志隆生

薔薇色の人生

 薔薇色の人生ってのがあるが、俺はある意味そうだったな。


 長い間魔族と人間、いや同族同士でも争い続けている時代。

 孤児で頼るあてもなかった俺は盗みやって生きてきた。

 我流で剣の腕磨いて十五の時から傭兵剣士やってて、あちこちに雇われ。

 もうどのくらい人を、魔物を斬ったか分からねえ。

 どれだけ真っ赤な薔薇のような色を見て来たかも分からねえからなあ。

 まあこんな俺だし死んだら地獄行きだろな。




 なあ神さんよ、あんたこれが粋な事とでも思ってんのか?

 まあ、どう思っていてもいいや。




 最後の最後に勇者達の仲間にってよ。

 勇者っつってもまだガキンチョ。

 仲間達は皆女ってか少女。

 俺が無敗の勇士と聞いたからって仲間になってくれとか、アホか。

 ヤバくなったら逃げてたんだから生き残っただけだ。

 だから今回もヤバくなったらさっさと逃げるかって思ってたのによう……。


 柄にもなく勇者を庇って深手負っちまった。

 ああ、これが俺の最後かよ……って目を開けたら。


 勇者と僧侶の嬢ちゃんが涙目で必死になって回復魔法唱えてやがる。

 戦士の嬢ちゃんと魔法使いの嬢ちゃんがその後ろで死ぬなって泣き叫んでやがる。



 ほんとこいつらはガキンチョだったわ。

 どいつもこいつも筋は悪くなかったが、やはり実戦での汚ねえことには慣れてねえ。だから俺がそれやってやったわ。

 って俺が甘やかしてどうすんだ。

 ま、こいつらはそのままでもいいかもしれんなって思ったわ。


 ああ、嬢ちゃん達はちょいとエロい事言ってからかったら顔真っ赤にして殴りかかってくるわ魔法ぶっ放してくるわ。

 そんで勇者も一緒なって斬りかかってくるわ。

 ……あれ、よく死ななかったな俺?

 

 まあなんだかんだとしてたが、一緒にいてほんと楽しかったぜ。

 そんで今頃、いやもう前から思ってたのかもな。


 こいつらならもしかすると、いや必ず。

 誰もかれもがいい人生送れる世界を作ってくれるだろなあって。

 こんな俺の為に泣いてるようなこいつらならさあ。


 俺は良くも悪くも薔薇色の人生だったが、おめえらは良いだけの薔薇色の人生送ってから天国へ行けよな。


 地獄から見ててやるからよ……。

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