まさに、「現代の寓話」と呼びたくなる傑作
- ★★★ Excellent!!!
テーマ性が強く、とにかく感嘆させられる素晴らしい一品でした。
黒猫のナユタは火葬場を縄張りとして生活する。
ナユタは命を司る「神」としての力があり、ペットロスで苦しむ人たちのために死んだ動物を生き返らせてあげることをする。
それをきっかけに、ナユタのいる火葬場は「奇跡の場所」としてもてはやされることに。
しかし、「人間」というものは移ろいやすいもの。奇跡と持ち上げるだけでは済まず、火葬場について「あらぬ考え」を持つ話も出てくる。
人間の流されやすさ、誤解のしやすさ。物事をはっきりと見極めることのできない愚かさ。
そんなSNS社会を反映したような事象が描かれ、思わぬ深いテーマ性にしみじみと感嘆させられました。
そして、ただ人間の愚かさを描くだけでは終わらないのが本作の特徴。人々を見るナユタの感覚も変化し、人間への評価、自分の在り方について考えを変えていくようになります。
まさに、神の視点を持つ存在が、神としての「悟り」を開くまでの物語。
そんな神話性や寓意性が強く感じられる、非常に完成度の高い一作でした。より多くの人が手にとって下さるよう、強くオススメいたします。