さらば地球、さらば現実
20XX年、地球上の総人口は二百億を超え、すべての人間を地球上だけで養うことはできなくなっていた。
現実の地球ではすべての人々が文化的生活を営むのが難しくなってしまった。
それとは対照的に、バーチャルリアリティの世界は練度が上がり、一般の人々にとってはそちらの方が『本当に自分』になれる場所となっていく。
自分を養ってくれない現実の地球上よりも、仮想空間の方が多くの人々にとっての素敵な『現実』なってしまったのだ。
そういった状況だったからこそ、世界はある決断をした。地球上の全人口の約八割を仮想空間の中に追いやり現実の体は処分するということを。
その計画は国の上層部が集うある国際機関にてひそかに決められ、処分される人間の数は各国の人口によって振り分けられた。
計画は何十年もわたって進められ、人々は生まれた時からその選別のふるいにかけられていく。学力、体力、そして人格、それらをデーター化し、残すべき人間とそうでない人間を分けていく。
人々は自分がひそかに『死すべき者』にふるい分けられていることなどしるよしもない。
『罪なき死刑囚』に選ばれた人間たちは無駄に殺されるわけではない。
現実の体を処分する前に、スーパーコンピューターにその人の経験や知識は取り込んでおく、つまり処分される人々の一部はその中で生き続けるともいえる、まさに『一は全、全は一』だ。
体の遺伝情報も無駄にしない、摘出された精子や卵子を冷凍保存、だからこそ、死刑囚となるか否かの判断は二十歳を過ぎてからされるのだ。臓器などの保存も最初は計画に入っていたが、この時代には幹細胞から臓器を作ることが可能となっていたので、スペースの問題も考えてその案は却下となった。
とりあえず無駄なく現実の体と頭脳を活かせるように処理した後、『不要』となった者たちは、この優しいシステムの中で永遠の眠りにつく。
このプログラミングでは『異世界』の中で幸せに生きた後、天寿を全うするというストーリーになっているけど、そのあと彼らの魂はどうなるのだろう。
幸せに思えた異世界生活が、現実の世界が与えた残酷でやさしい夢だったことに気づいた後、それをどう思うのだろう。
プログラマーの私が気にしても仕方がないことだが。
【完】
AIはざまあされる残念ヒロインの役を演じる 玄未マオ @maokuromi
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