数子は計算する

飯田橋数子は数学者になりたかった父親の影響で何でも計算する癖があった。数子と書いて（すうこ）と読む。それは数学者になりたかった父親が夢を託してつけた名前だった。
だが良い名前をつけたからと言ってその人生が上手くいくわけではない。
飯田橋数子は派遣社員として働く冴えないサラリーマンだった。３３歳、独身であった。
例えば、今世界にはどれくらいの核兵器があるのか？数子は計算する。
それは人類を２００回殲滅させる量であった
朝から晩まで計算して過ごし、やがては自分の将来も考えるのだけど、それについては希望を夢見て、計算することをやめる。
生きるとは計算したり考えたりすることではなく、ただ生きるということなのだ。