第3話
健太との別れから数ヶ月が経った。あの後、私は本当に一人になった。彼もいなくなった。新しい彼も、すぐに私の元を去った。私が求めていた刺激は、ただの幻だった。残ったのは、後悔と孤独だけ。
大学では、健太と凛が仲睦まじく歩いている姿を何度も見かけた。健太は以前よりもずっと穏やかで、幸せそうだった。凛といる時の彼は、私が知っている中で一番輝いて見えた。それを見るたびに、胸が締め付けられるような痛みに襲われた。私が失ったものは、あまりにも大きかった。
私は、自分の愚かさを呪った。もっと早く、健太の優しさに気づいていれば。もっと素直に、自分の気持ちを伝えていれば。後悔しても、もう遅い。時間は巻き戻せない。
大学を卒業後、私は地元の企業に就職した。平凡な毎日だった。仕事はそれなりに忙しかったが、心のどこかにぽっかりと穴が開いているようだった。週末は、一人で過ごすことが多かった。友達と会っても、心から楽しむことができなかった。
ある日、街で偶然、健太と再会した。彼は凛と一緒だった。凛のお腹は少し大きくなっていて、二人は幸せそうに微笑み合っていた。ああ、そうか。彼らは、家族になるんだ。
私は、精一杯の笑顔で彼らに挨拶をした。「おめでとう」と、心からそう思った。健太も、少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で応えてくれた。「ありがとう」と。
その時、私はようやく、過去と決別できた気がした。健太はもう、私の健太ではない。彼は、凛の、そして新しい家族のものなのだ。私は、自分の過去の過ちを認め、前に進まなければならない。
その後、私は仕事に打ち込むようになった。新しいプロジェクトに挑戦したり、資格取得の勉強をしたり。忙しい日々の中で、少しずつ、心の傷も癒えていった。
数年後、私は仕事を通して知り合った男性と結婚した。彼は、健太とは全く違うタイプの人だった。優しくて、穏やかで、私のことを大切にしてくれる人だった。彼といると、心が安らぎ、穏やかな幸せを感じることができた。
結婚式の招待状を送る際、私は健太にも送った。返事はなかったが、それでもよかった。私は、過去の自分に、そして健太に、きちんと別れを告げることができたのだから。
人生は、選択の連続だ。時には、間違った選択をしてしまうこともある。でも、大切なのは、そこから何を学び、どう前を向いて生きていくかだ。私は、健太との別れを通して、多くのことを学んだ。そして、ようやく、新しい幸せを見つけることができた。
振り返れば、あの裏切りは、私にとって大きな痛手だった。でも、同時に、私を成長させてくれた出来事でもあった。もし、あの経験がなければ、今の私はいないだろう。そう思うと、過去の出来事も、全て意味があったのだと思えるようになった。
裏切りの代償 @flameflame
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