高校の入学式で“僕”が一目惚れした大河愛梨(たいが あいり)には、すでに好きな人――幼馴染みの柊健太(ひいらぎ けんた)がいた。それでも“僕”は在学中は諦めないと決め、卒業式当日、最後の告白でついにOKをもらって付き合い始めたのだが。互いに大学3年生となったある日、健太が付き合っていた人と別れたことがわかって……
自分の彼女がかつての想い人の失恋を知って塞ぎ込む、彼氏としてはしんどいですよね。
いえ、別に愛梨さんがおかしいとか悪いというわけじゃないのです。ただ、“僕”が入学式から卒業式まで丸3年愛梨さんに恋し続けてきた一途さは半端ないもの。そんな彼の想いが作中でしっかり提示されていればこそ、彼女のちょっとしたことに葛藤や疑念を抱いては追い立てられ、追い詰められていく彼の様――言ってみれば容赦のなさが胸に迫るのですね。そしてだからこそ。“僕”の決意に心を強く揺すられるのです。
“僕”へ共感を超えて没入してしまうこの感覚、ぜひ味わっていただきたく。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)