第4話 旅路の途中で
青空の下、アルベルトとアランはゆったりと歩を進めていた。村を出てから数時間。先ほどまでの悲壮感は少しずつ薄れていき、草原を渡る爽やかな風が二人の頬をなでていく。
「アルベルトさん、この先に街があるんですよね?」アランが尋ねる。
「地図通りならな。でも、間違ってたらすまないな。」アルベルトは軽く笑って答えた。
アランは苦笑しながらも「本当に頼りになりますね」と言った。アルベルトの飄々とした態度には少しずつ慣れてきたものの、その性格にはまだ振り回されることが多い。
道中、時折草むらがざわめき、小動物たちが姿を現す。二人は足を止めては、それらを眺めながらのんびりと進んだ。
「ここら辺で何か食べられそうなものを探してみるか。」アルベルトは辺りを見回しながら提案した。
「そうですね。お腹も空いてきましたし。」
しばらく進むと、草むらの中から一際大きな動物の気配を感じた。
「…あれ、イノシシじゃないですか?」アランが低い声で言う。
「見つけたな。よし、あいつを狩るぞ。」アルベルトは腰の剣を手に取り、ゆっくりとイノシシに近づいた。
気配を察したのか、イノシシは一瞬こちらを振り返った。しかし、アルベルトは素早い動きで飛び出し、剣を振り下ろす。鋭い一撃でイノシシを仕留めると、アランが駆け寄ってきた。
「さすがですね!アルベルトさん!」
「まあ、慣れてるからな。これでしっかり飯が食える。」
二人は近くの木陰に場所を移し、持っていた道具でイノシシを解体し始めた。手際よく肉を切り分け、焚き火を起こす。炎が揺れる中、肉を串に刺して炙ると、香ばしい匂いが辺りに漂い始めた。
「うまそうだな。」アルベルトは口元を緩めながら串を回した。
「…なんだか久しぶりにこんな気分になりました。」アランがぽつりと呟く。
「そうか?」
「はい。村にいた頃は普通に食べてたご飯が、こんなにもありがたいものだなんて、今になって思います。」
アルベルトはアランの言葉を聞きながら、静かに頷いた。「そうだな。こうやって命を繋ぐってのは、当たり前じゃない。誰かが何かを犠牲にして得られるもんだ。」
アランはしばらく黙って焚き火を見つめていたが、やがて「アルベルトさんに助けてもらって本当に良かったです」と言った。
「大袈裟だな。俺はただ、自分にできることをしただけだ。」アルベルトは照れたように笑いながら、焼き上がった肉を手に取った。「さあ、食べようぜ。冷めちまう。」
二人は焚き火を囲んで、静かな時間を楽しんだ。遠くで風が木々を揺らし、鳥たちの鳴き声が響いている。
「これからどんな旅になるんでしょうね。」アランが少し明るい声で言った。
「さあな。でも、一つだけ確かなことがある。」
「なんですか?」
「腹が減ったらまず飯だ。それが何より大事だろ?」
アランは思わず吹き出し、「本当にアルベルトさんらしいですね」と言いながら、笑顔で肉を頬張った。旅はまだ始まったばかりだが、二人の間にはすでに小さな絆が芽生えつつあった。
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起きたらまずは2人で近くの水場で顔を洗う。
アルベルトは釣りをしアランは山菜をとり、2人とも寝ぼけながらも朝ごはんを食べる
食べ終わるとまた2人は歩き出す。
昼時になると2人で動物を狩りに行き、他愛もない話をしながら昼ごはんを食べる。
食べ終わったあとはアランの修行をする。
アランは剣術の才能があった。
アルベルトはアランの成長する姿を噛み締めながら剣をアランと打ち合う。
修行が終わり30分ほど休んだらまた街へと歩き出す。
夕暮れの時間になると2人は急いで食料を調達する。
夜になると動物は隠れ、魔物が活発化して様々なところに現れるようになる。
一部の魔物以外は本能的に光を嫌うので火を起こしておけば問題は無い。
2人は調達したウサギやシカの肉を切り、焚き火の横に串に指して置いて焼く。
夕飯も終わり寝る時間になり、アランが寝たとアルベルトは思うと1人であかりのない野原や林の中に向かい魔物を相手にして蛇を試す。
そんな姿を寝たフリをしたアランは陰から見る。
また、朝になり朝食を食べ歩きだす。
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そんな一日が4回ほど繰り返された次の日、アルベルトとアランはまだ道を歩いていた。
「アルベルトさーん?1週間もせずに着くって言ってましたよね?もう5日目ですよ。」
そんな愚痴を俺にアランは言ってくる
「悪いな、道を少し外れてるかもしれない。」アルベルトは肩をすくめながら答えた。「でも安心しろ、方角は間違ってない。」
「ほんとですか…?街に着くのがどんどん遠くなってる気がしますけど。」アランは軽くため息をつきながら、空腹を思い出したようにお腹を押さえた。「それにしてもお腹が減りましたね。」
アルベルトは笑いながら「まあ、それなら少し休憩して飯でも作るか。」と提案した。
二人は近くの林の中に入り、木陰を見つけて腰を下ろした。アルベルトは荷物から釣り道具を取り出し、近くの小川へ向かう。アランはその間に焚き火の準備を始めた。
「アルベルトさん、今日は魚だけですか?」アランが遠くから声をかける。
「そうだな。鹿でもいりゃいいが、今は魚で我慢しとけ。」
小川から戻ってきたアルベルトは数匹の魚を手に持っていた。アランはそれを受け取り、素早く串に刺して焚き火の上に乗せる。じゅうじゅうと音を立てながら焼ける魚の香りが二人を包んだ。
「アルベルトさん、旅ってこんな感じなんですね。」アランがしみじみと呟く。
「ん?どういう意味だ?」
「いや、もっと危険で大変なことばかりだと思ってました。でもこうやって、日常みたいな時間もあるんだなって。」
アルベルトは微笑みながら魚をひっくり返した。「そうだな。旅ってのは危険もあれば、こうやってのんびりする時間もある。それが面白いところだ。」
アランは黙って頷き、焼き上がった魚を一口食べた。「うまい…!」
「だろ?」アルベルトも自慢げに一口かじる。「自然の中で食う飯はどんな料理よりもうまいもんだ。」
食事を終えた二人は再び歩き出した。途中、広い草原に出たところでアランが突然足を止めた。
「アルベルトさん、あそこ…人が倒れてます!」
アランが指差した先には、一人の男が地面に横たわっていた。
「本当か?待ってろ。」アルベルトは素早く駆け寄り、男の様子を確認した。
「怪我をしてる。どうやら魔物に襲われたようだな。」
「助けられますか?」アランが心配そうに尋ねる。
「応急処置はできるが、ここにずっといるわけにもいかないな。街に運ぶしかない。」
アルベルトは男を背負い、アランに言った。「予定より少し遅れるが、街に着いたらまずこの人を医者に見せるぞ。」
「わかりました!」アランは頷き、二人で街を目指して歩き出した。
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こうして旅路に新たな出来事が加わり、二人の絆は少しずつ深まっていく。街に着くまでの道のりはまだ続くが、アルベルトの心には不思議と焦りはなかった。ただ目の前にいる仲間と共に歩む時間が、彼にとって何よりも大切なものになりつつあった。
―――
夕暮れ時、男を敷いた布の上に寝かせたあといつものように食材を調達し終えた頃、突然、俺たちの前に見慣れない少女が現れた。
薄暗い森の中に佇むその少女は、冷静な目つきでこちらを見つめている。
「……あなた、少し特別な能力を持っているでしょう?」
低い声でそう問いかける少女。
「ええ、まぁ、そうですけど……あなたは?」
俺が警戒しつつ尋ねると、彼女は肩を軽くすくめて答えた。
「私はエマニュエル・モド。ただの旅人よ。エマと呼びなさい。目的なんてないわ。ただ……あなたについていこうと思ったの。」
彼女の目には一切の迷いがなく、どこか退屈そうな空気を纏っていた。
「着いてくるって……理由は?」
俺がそう聞くと、彼女は微笑んで言った。
「暇なの。それに、あなた……ちょっと面白そうだから。」
予想外の出会いに、俺もアランも困惑していたが、その冷静な態度には何か得体の知れない力を感じた。
「……まぁ、構わないよ。ただし、協力する気があるなら、だけど。」
俺がそう言うと、彼女は静かに頷き、旅の仲間に加わったのだった。
―――こうして、俺たちの旅はまた一つ新しい形を迎えることになった。
輪廻する蛇 黒猫亭 @taropa
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