第6話 魔王が妻となりました……



「フフフ、小童こわっぱがほざきよるわ! 我が魔力の前に平伏す間もなく死すが良いっ!!」


 封印から覚めし魔王がケンカの啖呵を聞いて極大魔法でケンカを攻撃しようとした時、


「【喧嘩領域バトルフィールド】!!」


 ケンカが祝福ギフトを発動させた!


 そしてケンカの目の前には可憐な美少女が立っていた……


『クソッ!! まさか魔王が女性だったとは!? 誤算だ! 俺の中でのルールでは女性には手を上げないという絶対的なルールがある!! これでは魔王には勝てない!!』


 封印から覚めたばかりの現実の魔王は黒い影であったので、女性だとは分からなかった。けれども領域フィールドに具現化した魔王は可憐な美少女である。女性に手を上げないとおとこが一度決めたルールを破る筈もないケンカ。

 焦るケンカを他所よそに魔王は余裕がありそうに、


「ほう? 祝福ギフトの力か? お主、神の使徒なのだな。しかし、我が勝つことは変わらぬ!! 喰らえ、【極大爆炎魔法エクスプロージョン】!!」


 しかし喧嘩領域バトルフィールドでは魔法は発動しない。


「むう! 我が魔法が発動せぬとは…… ならば肉弾戦じゃな!! 喰らえ、魔王流格闘術【覇王はおう突き】!!」


 魔王のレベルは68である。対してケンカのレベルは…… およそ十倍。そのレベル差で殴られてもケンカは痛くも痒くも無かった。


『良かった。これなら魔王が殴り疲れるまで殴られていれば良い』


 そう思ったケンカは魔王が繰り出す突き、蹴りの尽くを平然とした顔で受けた。


「クッ、ハッ、ハアハア、な、何故?」


 流石に疲れてきた魔王がケンカに問う。


「魔王よ、貴様の攻撃など俺には通用しない。スライムの酸よりも弱い攻撃だ」


 ケンカの言葉に魔王は激昂げきこうする。


「我は誇り高き魔王ぞ!! スライム如きと比べおって、許せんっ! 最終奥義を食らわせてやる!! 後悔するが良い! 魔王流格闘術最終奥義【百戦百勝】!!」


 一秒間に百発の攻撃を繰り出す必殺技であったが、ケンカは魔王の攻撃を受け切り


「何だ? 角ウサギの突進よりも弱いな」


 そう宣言したのだった。


 その言葉を聞いて魔王はガックリと膝をつき、


「クッ、クッ!? わ、我の負けだ!! はずかしめるなり殺すなり、何なりとすれば良い!!」


 そう宣言をした。その瞬間、


【敗北宣言が有りましたので領域解除フィールドリリース致します】


 いつもの声が響き渡り、領域フィールドが解除された。

 現実に戻ったが魔王は可憐な美少女のままであった。


「これがお主の力か…… 完敗だ。さあ、我はお主に服従しよう! 何なりと命ぜよ!!」


 覚悟を決めた魔王にケンカは……


「ならば命じよう、魔王よ。もしもお前が嫌でなければ俺と結婚を前提とした付合いを頼みたい」


 少し、いやかなり頬を赤らめてそう言った。


「なっ!? いや、その、お主、分かっておるのか? 我は魔王ぞ。そんな我と結婚するなどと!?」


 そう動揺しながらも少し期待したような感じで言う魔王にケンカは返事をする。


「魔王よ! お前ほどの可憐な、そして俺の好みにドンピシャな女性には初めて出会ったのだ。だからこれは頼みとなる。もしも、俺という人間を嫌じゃなく、また付合っても良いと思えないならば友としてでも良い、どうか俺の側に居て欲しい!」

  

 ケンカの言葉に途端にモジモジしだす魔王。


「その、ホントに我で良いのか?」


「お前じゃなきゃダメなんだ!」


「そ、そこまで言うならば、お主の人となりが分かるまでは結婚は無しで、けれども結婚それを前提とした付合いをするのはやぶさかではない……」


 その返事を聞いたケンカは利き手拳を高々と上げ、


「俺の生涯に一片の悔い無しっ!!」


 そう叫んだとか……


 

 その後、魔王は名乗りケンカも名乗り初々しい二人は魔王の両親は既に他界して居ないのでケンカの両親に挨拶に行き、コイヤもテキーラも魔王ことウィスキをたいそう気に入り、結婚を認めた。


 二年後、ケンカが二十才となってウィスキと結婚し、魔王を倒した事により子爵位を国王より賜ったケンカは新たにサイキョー家を名乗り、十二人の子宝に恵まれて楽しく暮らしたそうだ。


 目出度し目出度し……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

喧嘩領域(バトルフィールド)! しょうわな人 @Chou03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画