第5話 成長促進が良い仕事しました


 ケンカは目の前にいる人を殴りつけた。


 その人とはグリーンウルフという四足獣からいきなり人の身へと落とされた哀れな魔獣である。


「キャンッ!!」


 殴られて倒れ込むグリーンウルフ。


「それだけで兄様を傷つけた報いにはならないぞ!! ジョートー流武術初伝【月花の舞】!」


 倒れて起き上がったグリーンウルフの人をケンカの舞のような動きが襲う。


「キャンッ、ギャンッ、ガウッ、ワンッ、ギャワンッ、クゥーン、クゥーン、キューン……」


 始めは殴られて痛みの鳴き声、そして反撃しようとする鳴き声、やがてそれも終わり、敗北しましたというように仰向けに自ら倒れて腹を見せて弱々しく鳴くグリーンウルフの人。そこで、


【敗北宣言が有りましたので領域解除フィールドリリース致します】


 創造神に試した時と同じ言葉が聞こえてきてフィールドは解除された。


 ケンカの目の前には絶対服従しますのポーズのグリーンウルフがいる。そして、


「うわっ!! レベルが3から一気に18になったよ!?」


 格上にも格上であるグリーンウルフを倒した事によりケンカのレベルは兄であるヤルカを超えてしまった。ヤルカのグリーンウルフ戦前のレベルは12である。

 グリーンウルフの強さはレベル換算すれば15ぐらいなので倒した事によりそれだけ上がったのだ。

 しかし普通の人ならば半分程度の7レベルアップぐらいである。ケンカは技能で成長促進を創造神から貰っていたので、そのままの数値でレベルアップしたのだった。


「うーん…… 良いかい、絶対にもう人を襲ったらダメだよ。これからは角ウサギや暴れボアを狩って大人しく過ごすんだ」


「ワンッ!!」


 分かりましたという感じの吠え声で返事をしたグリーンウルフは森へと走っていった。


 そして十分後、ヤルカが目を覚ました。幸いにも怪我は打撲だけだったので歩ける。


「ケンカ、無事だったのか!! 良かった!!」


 目が覚めて自分の事よりも弟のケンカの無事を喜ぶ兄にケンカはこの家に産まれて良かったと心から創造神に感謝した。


「兄様、グリーンウルフは逃げました。きっと気絶しながらも兄様の気迫にビビって逃げたのだと思います。守って下さって本当に有難うございます」


 因みにだが、ヤルカもケンカもパーティーだという事になっていたのでレベルアップしている。三分の一の5レベルアップだ。これによりヤルカのレベルは17となった。


 この時の経験によりケンカはある事を悟った。


 つまり、四足獣タイプの魔獣ならば今のケンカでも【喧嘩領域バトルフィールド】内であれば簡単に倒せるのだと。四足からいきなり二足で立つようになり戸惑ってしまうのだ。更には牙も爪も無い状態である。戸惑いは深くなるばかりである。


『良し! 次からは格上の四足獣を見つけたら絶対に喧嘩領域バトルフィールドを展開しよう!! その為には僕一人で狩りに出る許可を得ないとダメだね』


 ケンカはそう考えて、十才になったら父であるコイヤに頼んでみようと思ったのだった。



 それから二年、ケンカは母のテキーラの教えを忠実に守り、武術を修めていった。そして、十才の誕生日に父と母に一人で魔獣討伐に行きたいと頼んだ。


「う〜む…… まあケンカはヤルカやサンカが一緒とはいえ既に草原大蛇グラスサーペントも倒しているしな…… 良いだろう! 行ってくるが良い!」


 コイヤの鶴の一声でケンカは単独で狩りに行けるようになった。 


 その許可を得てからのケンカのレベルアップは凄まじいものだった。


 創造神から言われていたレベル50なんかは一月後には達成し、十一才の時にはレベル118となっていたのだ。ひとえに成長促進のお陰である。


 そして、十八才までにケンカはジョートー流武術の奥伝までも習得し、秘伝開発まで進んでいた。レベルも既に693となっていた。


 ジョートー家ではコイヤは妻テキーラと共に隠居屋に引きこもり、兄のヤルカが妻のブランデと共に跡を継いでいた。

 姉のサンカは同じ伯爵家であるテンゲ家の嫡男であり現テンゲ伯爵家当主であるテンジョーに嫁いでいる。


 ケンカはと言えば……


「魔王! お前の復活は分かっていた! ここでお前を倒す!!」


 魔王が封印された場所に赴き、魔王と対峙たいじしていたのだった…… 

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