第4話 喧嘩領域発動

 母テキーラによる稽古によってジョートー流武術を極めていくケンカ。

 初めての事にケンカは日々を楽しみ稽古に励んでいた。


 そして、遂に八才になった時に父であるコイヤより魔獣討伐に出る許可がおりた。但し、兄であるヤルカと一緒にである。


「ヤルカ兄様、今日はよろしくお願いします!」


「ケンカ、今日は角ウサギが相手だからね。角を向けて突進してくるけれどもしっかりと見て躱すんだよ」


「はい兄様!」


 ケンカとヤルカは領都の西門から出て歩いて十分の草原にやって来た。ここではスライム、角ウサギ、ゴブリンが出てくる。

 ゴブリンは滅多にいないが、スライムと角ウサギは数多い。


「ケンカ、ほらあそこに角ウサギがいる。角ウサギはスライムと共存してるんだ。ゴブリンに狙われたらスライムが足元から忍び寄って酸を出すんだよ。だから角ウサギがいるからと言って無闇に近づいてはいけないんだ」


「そうなんですね、ヤルカ兄様。分かりました、それじゃ角ウサギからコチラに向かって来るようにすれば良いんですか?」


「うん。そうだよケンカ。角ウサギは人が一人、二人ならば縄張りに入られたと思って向かって来るからね。ゴブリンは群れで五〜六体で行動するからゴブリンを見ても襲いかからないんだ」


 そう聞いてケンカはその場で足踏みをしてわざと足音を立てた。角ウサギがケンカに気がつき、周りを警戒するがケンカしか居ないと思い突っ込んできた。


 ケンカは落ち着いて角ウサギの動きを見て躱しざまにその首筋を手刀で打った。その一撃で角ウサギは絶命する。


「ケンカ、やったね。その調子で角ウサギを狩っていこう。角ウサギは多産でアチコチに穴を開けたりするから数多く狩っておけば父上も喜ばれるからね」


「はいヤルカ兄様!」


 こうしてケンカはヤルカに見守られて八羽の角ウサギを狩る事に成功した。それにより稽古では上がらなかったレベルも3となる。


「兄様、またレベルが上がりました!」


「やったね、ケンカ。それじゃ今日はこれぐらいにしてもう帰ろうか」


「はい、兄様」


 帰ろうとしたケンカとヤルカは異変を感じる。


「ケンカ、僕の側に!」

「は、はい!」


 それまでは二百メートル離れた場所で角ウサギやスライムたちが仲良くしていたのだがいつの間にか姿を消して、そしてゴブリンたちが逃げ惑っている様子が見えた。


「追われている、何にだ?」


 ヤルカの疑問は直ぐに答えが出た。逃げるゴブリンたちをゆっくりと確実に追い詰めようとするグリーンウルフが見えたのだ。

 グリーンウルフは群れを成さずに一匹で行動する狼だが、その強さはゴブリンなどは目ではない。


「まさか、こんな場所にグリーンウルフが! 僕でもヤバい相手だ。ケンカ、こちらに来るようなら僕が注意を引きつけるからその隙に逃げるんだ」


 焦るヤルカの言葉にケンカは


「そんな、兄様を置いて僕だけ逃げるなんて!?」


 と言うがヤルカはわざと厳しく言い聞かす。


「ケンカが居ては僕も集中出来ない。足手まといになるから逃げろと言ってるんだ」


「は、はい、兄様。分かりました……」


 ヤルカの口調にこれまでに知らなかった厳しさを感じ取り素直に返事をする。


 そして、グリーンウルフは二人に気がつき、ゴブリンよりも美味そうだと狙いを変えた。 


「来た! ケンカ、良いかい、逃げるんだよ!」


 そう言うとヤルカはグリーンウルフに立ち向かう。グリーンウルフはそれを見てヤルカを相手にする事にしたようだ。


 ケンカはジリジリと後ろ向きに下がっていく。


「ウオオォーッ!!」


 ヤルカがグリーンウルフに向かっていくタイミングでケンカも後ろを向いて走り出した。


 しかし、凄まじい音がしたので振り返るとヤルカがグリーンウルフの突進を躱しきれずに吹き飛ばされた姿であった。どうやらヤルカは衝撃で気を失ってしまったようだ。


「兄様ーっ!! クソッ!! 僕が相手だーっ!」


 ヤルカを食べようとヨダレを垂らしながら近づくグリーンウルフに無謀にもケンカは立ち向かった。

 全てにおいてグリーンウルフより下の能力しかないケンカでは相手になる筈もない……


 しかしケンカはここで初めて祝福ギフトの力を発動した!


「【喧嘩領域バトルフィールド】!!」


 パアァーと辺りが明るくなり、人となり戸惑いまくっているグリーンウルフがケンカの前に立っていた……

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