白浜の灯台で僕らは初めて手を繋いだ

@wankom09

第1話

「これで2人きりだね」白浜の海が見える灯台で、僕らは初めて手を繋いだ。


6月も下旬私と部下の前田は連続行方不明者の捜査に当たっていた。


「いやー、なんも手掛かりもないっすね」


前田の言う通りこの事件はなんの手がかりもつかめていない。刻一刻と進んでいく時間に少し苛立ちも覚え始めていた。


「絶対手がかりはあるはずなんだ」


何度繰り返しただろうその言葉だけが静かな部屋に響き渡った。


「でも、なにがしたいんっすかねこの犯人18歳から62歳までしかも年齢もバラバラって、」


「ただの快楽殺人だろ」


「ホントっすか?にしてはなにも残らなすぎじゃないっすか?」


確かに今回の犯人はこれといった証拠が一つもない。


「でもー犯人足のサイズが小さめっすよねー」


そう、唯一の証拠は足のサイズだ、34・5小柄な犯人なのだろうか、はたまた女性か、事件は謎を深める一方だ、


「失礼します!新しくこの事件を担当することになった渡辺です!よろしくお願いします。」


あー、そういえばそうだった。新卒で入った渡辺藍良ハキハキとしていて職場でも1目置かれている人物だ、


「この事件を担当している木下だ。」


「同じく担当の前田っすよろしくっす」


「はい!これが私の初事件なので頑張って解決しましょう!」


もしかしたら彼女が何かの転機になるかもしれないそんな予感がした。


「え、これだけですか?」


あまりにも少なすぎる証拠に彼女は唖然としていた。


「そーすよねー少ないっすよねー」


前田も頷く


「まぁ、ぼちぼち進めていこう」


「はい!なんでも言ってください!聞き込みでもなんでもします!」


その日は基本的な作業を教えるだけで終わった。

次の日の午前5:00前田から突然の連絡が入った


「先輩大変っす!今人が殺された現場目撃したっす。犯人は2人っす!こっそり追跡中っす」


私は飛び起きて急いで前田の元へ向かった。

「先輩絶対こいつっす目の前で見たっす!」


前田が指差す先には一軒のアパートがあった。


「まぁ落ち着け、場所が割れたなら良いじゃないか、それより救急車は呼んだのか?」


「はい!呼んだっす」


その時突然無線が入った。


「こちら本部本部指定された場所に負傷者がいないとの連絡が入った。繰り返す指定された場所に負傷者がいないとの連絡が入った直ちに確認を要求する。」


「了解。」


私は静かに無線を切った。


「誰もいなかったと言ってるぞ?」


「嘘っすこの目でちゃんと見たっすあと、もう1人の方靴のサイズ小さかったっす!」


あまりにも必死に説明する前田を俺はなだめて


「わかったよお前を信じるよ。とりあえず彼らの動向を追おう」


「了解っす」


前田も渋々りょうかいした。


事件から数日後、彼らに動きがあったと連絡が前だからあった。どうやら1人は貨物の倉庫に、1人は灯台に行くらしい。私達は二手に分かれて彼らを追うことを決めた。私と同期の元木が倉庫へ、前田と渡辺が灯台へ向かうこととなった。倉庫に着くと、物陰からこっそりと相手の動きを確認した。応援で呼んだメンバーはすでに各配置について待機している。私の声でその場で取り押さえるつもりだ。相手は3人1人が黒いカバンをトランクから取り出した時、私は大きな声で叫んだ


「今だ!」


慌てふためく3人を取り囲み見事逮捕することができた。しかしこの3人は私達が追っている事件とはなんの関係もない麻薬の密売人と買い手だった。やっと尻尾を掴んだかと思った私は心底残念に思った。しかしこの事件も前田の目撃がなかったら捕まえられなかったものだ。私は前田を誇らしく思いながら帰りのパトカーの中元木に話しかけた。


「いやー、警察も安心だな、新しい芽が着実に育っている。今回の件も、うちの部下の前田がいなければ検挙できなかった事だほんと、自分のことのように誇らしいよ」


「前田?そんなやつお前のところにいたか?お前が1人で大変そうだから俺から頼んで渡辺を派遣してやったんじゃないか」


私は一瞬元木がなにを言っているのかわからなかった。


「うちは前田と渡辺と私の3人だが?」



「あれー、そうだったけか、俺の勘違いかな、前田ってのはどんなやつなんだ?」


「今回の件は前田がいなければ検挙できなかっただろう。そう言っていいほどの活躍をからはしてくれたよ。例えば…」


その時ふと私は思った。なぜ前田は彼らが怪しいと思ったのだろう。かれは、目撃したと言っていた。でも実際救急隊が到着した時には誰もいなかった。なぜだろう。

私が助手席で考えている時に2人の事を取り調べている人から連絡が送られてきた。


(彼らが麻薬を販売していたのは間違いない。しかし彼らは殺人はしていないと供述。また、ある男性が女性を襲おうとしているところを目撃したとも供述追跡したが見失った。場所は、、、)


俺は唖然とした。そこは前田が前に目撃した場所で間違えなかったからだ、


もし仮に私の部署に前田がいないのなら、

事件に証拠がないのではない。証拠を消されていたのだ。彼がみて、証拠を消し私に伝えた。


「元木!灯台に向かってくれ!早く!」


「おいどうした!灯台に何かあるのか?」


「もし仮に前田がいないのなら。次に殺されるのは渡辺だ」


私達は急いで灯台に向かった。


灯台に着いたはいいものの誰の姿もなかった。


「渡辺ー!渡辺ー!返事しろー!」


周りを気にせず大声で叫び探した。元木の判断で急遽捜索が行われた。渡辺は、15.5キロメートル離れた山の中で見つかった。動物にでも襲われたのか、右手の膝から下が欠損していた。

私は、姿を消した前田を捜索すると共に新たな犠牲者が出ないように日々時間と向き合っている。




その頃灯台では、


「僕は、色々な人を見てきたっすでも今回は運命を感じたっす。これからは僕があなたを守ります。だから僕と一緒にいてください。」


「…」


「オッケーっすか!これから色んなところに連れて行くっす!」


右手だけになった彼女に彼は優しくキスをして、僕らは初めて手を繋いだ。

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