今日もあの子は夢を見る

はすみらいと

今日もあの子は夢を見る

 機械好きの少年はいつも役に立たない装置ばかり作ってまともに使える装置ができたためしはなく近所では有名だった。


 しかしある時彼は生き返らす装置の発明に発明に成功したちまち、時の人となった。もちろん我先にとまるで自分がこの子を育てましたと言わんばかりに彼の元に、人は群がっていった。彼は皮肉だと思い至る、自分は関係ないと彼を避け口を閉ざしていた連中がだ。今は蟻さながらにも頭で考えるのをやめ列をなして行進する。親までもがだ。

 彼はこれを利用しない手はないとそう考え頭をこれまで以上に巡らせた。そして考えついたのは子供らしいイタズラなのである、もっとも内容は彼にしかできないことだということを除けばの話であり彼にとって出来心という他あるまい。


 彼にとって日常茶飯事ともいえる準備など取るに足らず、着々とそれらの仕度は進んでいきその日は来た。人を生き返らす装置の操作をまず複雑化することによって、自分以外が使えなくする。そして自分の死を行うことによって使用できる者がいなくなり世間から関心をなくし、誰にも知られることなく生き返りひっそり発明しながら暮らすというもの。生き返らす装置をつくった彼にとって誰にも知られない内に生き返るという時間差を発動させることなど容易かった。彼は実際に実行し、成功した。





 彼は死んで目が覚めたのは、誰も彼のことを知らないくらい月日が流れ当時の人々の子孫が生きている遠い未来。あまりにも時は流れすぎ彼が暮らすには遅すぎた。彼にはまるで知らない世界に飛ばされた気分だった。彼は気づいた自分が発明したものすべて、この装置のように時間差で作動するのだと。ガラクタなどではなかったということを。彼にとってもうそんなことはどうでもよかった。今更後悔したところでどうにもならないと、諦めた。

 彼は元の時代で今まで通り暮らすゆめをみながら、二度と目が覚めぬようにと目を閉じた。





 ベッドの上で横たわったまま目を開けない少年を両親はずっと何年も見てきた。目を背け溢れる疑問に苦しんだこともあったそれでもいつか目が覚めるのではないかと思い、祈り。日々を費やした。彼がこうなってしまったのは学校からバスでキャンプに行って帰るときの出来事、運悪く彼の乗っていた送迎バスが事故に遭い。以来ずっとこう、死んだように眠っている。

 彼は死なない。夢見る限り。

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