第4話 無から有を作らないと知った日
槍はエイの魔物に直撃するが、そこまでのダメージを与えられていない様子だ。
ちっ、エイだから電気が弱点だと思ったのにちげえのかよ。
「おおお、お前何者だ!? 無から有を作るだなんて……」
男性魔術師が驚きながら、そう口にした。
ん、無から有を作る?
「な、なあ、白崎」
白崎に男性魔術師が言っていることを聞こうと、話しかけてみるが、白崎もまた真っ青になり俺をこの世のものではないような表情で見ていた。
「あ、あなた……今、どうやって雷を発生させたの?」
「え、魔法ってそういうもんだろ?」
すると、白崎は俺の両肩を掴んで揺らし始めた。
「それができたら苦労しないわよ!! いい? 魔法は無から有は作れないの!! エネルギー保存の法則っていうのがあってね!!」
「いやいや、わかんねーよ、んなこと言われても!! 異世界だと、これが当たり前だったんだからよ」
「意味がわからないのはこっちだわ!!」
と、その時だった。
「おい、二人とも危ない!!」
男性魔術師の声がする。
すぐさまエイの魔物を見ると、こちらに向かって尻尾を突き刺そうとしていた。
白崎が俺から手を離し、俺たちはエイの魔物の攻撃を交わした。
「あっぶねー」
エイということは、尻尾に猛毒があるということだ。
「おい、そこの少年。魔法っていうのは……」
男性魔術師はペットボトルの蓋を開け、手につかみ凍らし始める。
「お前みたいに無から有を作るのではなく、有を変化させるものなんだ」
固まった球体の水を握りつぶして、伸ばすと、一本の氷の槍が完成した。
「【
そう言いながら、エイの魔物に向かって投げつけた。
氷の槍がエイの魔物に直撃する瞬間、エイの魔物から両腕が出現した。
「な……ッ」
エイの魔物は氷の槍を掴み、吹き飛ばされぬよう、踏ん張りながら男性魔術師に向かって投げつけた。
俺は慌てて、男性魔術師に向かって、
「【
空気でできた玉を放ち、吹き飛ばし、氷の槍による攻撃を回避させた。
が、男性魔術師は壁に頭をぶつけて、気絶するのであった。
「ナイスー、魔術師を気絶させるなんてナイス判断よ!!」
その光景を見て、満面の笑みでグットポーズをする白崎。
「なあ、白崎」
「なに?」
「どうやら、魔法においてこの世界の常識と異世界での常識は違うみたいだ」
「そうみたいね。ひとまず、この魔物を倒してからじっくりと話すこととしましょう」
「……だな、【
四次元空間から一本の剣を取り出す。
「本当、あなたどうなってるの?」
「お前も武器使うか?」
「ありがとう、けど、大丈夫よ」
落ちている錆びた鉄パイプを手に取る白崎。
「【
錆びた鉄パイプを槍に変えるのであった。
「これで十分だから!!」
「オッケー。んじゃ、行くぜ」
俺は思いっきり、地面を蹴り、エイの魔物に向かって走り出した。
白崎にとって、俺が走っていることを認識することはできなかっただろう。
気づけば、エイの魔物の目の前にいた。
そう思っていることだろう。
このエイの魔物もまた、同じことを思っているに違いない。
「くらいやがれ!!」
剣を横に張るが、エイの魔物は両手足を引っ込め、すぐさまエイの姿となり俺の攻撃を避けた。
「なッ、まじかよ!?」
「なら、これでもくらええ──ッ!!」
すぐさま、白崎は地面に落ちるエイの魔物に向かって槍を突き刺そうとするが、エイの魔物は尻尾で槍を受け止めた。
「白崎、避けろ──」
「え?」
次の瞬間、エイの魔物は再び両手足を出現させ、白崎に向かって右拳を振りかぶった。
上半身を後ろに沿って、避ける白崎。
「ナイスだ白崎!!」
俺はすぐさま、剣をエイの魔物に向かって振る。
か、かてえ!!
が、斬れる様子はなかった。
ならだ。
「おらよ──ッ!!」
力ずくで振り切り、エイの魔物を吹き飛ばすのであった。
異世界で魔王を倒しステータスそのままで日本に帰還したら、魔術師として現実世界で魔物と戦うことになりました。 さい @Sai31
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