第3話 可愛いって罪な日

 本当に自分は何をしているのだろう。


「本当? ありがとう!! 静波くん!!」


 心の底から嬉しそうにしているのがわかる表情をする白崎。


 くそ、可愛いって本当に罪だ!!

 嫌だ。

 せっかく、面倒ごとを終えて異世界から帰ってきたというのに、また面倒ごとに出くわさなくてはならないとは。

 だというのに、彼女と少しでも仲良くなれれば、なんてことを考えてしまう自分がいる。


「お、おう!! 俺に任せとけ!!」

「私より遥かに強そうだし、期待してるわね!! ……電話だわ」


 ポケットからスマホを取り出して、電話に出る白崎。


「……ええ、わかったわ。場所は? ……オッケー」


 ん、場所を聞いている?

 一体、なんの電話だろうか。


「あっ、魔物の処理お願い、場所は川崎商店街の路地裏……位置情報を送っとくわね」


 そう言い、電話を切る白崎。


「今の電話はなんだ?」

「早速仕事よ、静波くん」

「え?」

「魔物が出現したって……それも、かなり手強そうなの!!」


 希望に満ち溢れ、キラキラと目を輝かせる白崎。


「この魔物は後で処理班が来てくれるから、行くわよ!!」


 走り出す白崎。


「おいっ、待てって!!」


 俺は慌てて剣を【四次元収納アイテムボックス】で四次元にしまって、白崎を追う形で走り出した。


「どこ向かってんだ?」

「廃ビルよ!!」

「いやいや、それだけでわかると思うなよ。もっと詳しく教えてくれ!!」

「うるさいわねえ、男でしょ? ごちゃごちゃ言ってないで着いてきなさい」


 なんなんだこいつ!!

 可愛くなかったら、間違いなく顔面ぶん殴ってたぞ。

 俺は男女平等主義者だからな!!


 こうして、走り続けること10分。

 俺たちは、どこか不気味な廃ビルへとやってきた。


「ここね」

「ああ、めちゃくちゃ魔力を感じるぜ」


 明らかに先ほどのネズミよりも巨大な魔力。

 なんなら、白崎よりも魔力を感じる。


 ん、なんだ?

 もう一つ魔力を感じるぞ?

 白崎よりは多くない魔力を。


 と、その時だった。


 バリン!!


 四階から窓ガラスが割れる音がした。


「先駆者がいるわ!!」


 ああ、そっか。

 魔術師は白崎一人ではない。

 先に乗り込んでいる人がいるってわけか。

 

「な、なあ、ここで暴れたら周りにバレるんじゃねえのか?」

「そこは大丈夫。魔力による結界……魔界っていう周りからはその景色が魔界を張る前の景色に見えるようにしてあるから」

「なるほどな……」

「ほら、早く行くわよ!! 魔物を倒した者だけが報酬を得られるんだから!!」


 白崎ってかなり貪欲だなあ。

 金好きすぎだろ!!


「オッケー」


 入り口へと走り出す白崎を俺は止めた。


「おい待てって、四階まで一気に行くぞ?」

「え?」


 立ち止まる白崎の両脇を左腕で掴んで、地面を蹴る。


「ふん──ッ!!」


 一気に四階まで俺は飛び跳ね、右手で、


「【空気玉エアボール】」


 空気による玉で窓ガラスを割り、一気に中へと侵入した。


「な──ッ、なんなの今の跳躍力!!」

「へへん、これが俺という人間だぜ」


 中には、一人の傷だらけな男性魔術師と、1.5メートルほどの一つ目で足の生えたエイのような魔物がいた。


 なんというか……めちゃくちゃ気持ち悪い!!


「こいつだな」

「ええ、そうね」

「あっ、そういえばよ、魔物ってどういう原理でいるんだ?」

「あー、それを言うのまだだったわね。まあ後で説明するわ……ひとまずはこいつを」

「だな」


 さてと、早速だが……エイの魔物。

 白崎にかっけえところを見せるために犠牲になってもらうぜ。


 俺は投球フォームをして、


「【ビリビリするぜ触んな槍ライトニングランス】」


 右手には電気で形成された槍が現れた。

 その槍をエイの魔物に向かって投げつけた。


「これでもくらいやがれ──ッ!!」

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