第2話 協力を持ちかけられた日
少なくともこの十六年間、俺は魔物をこの世界で見たことはなかった。
どうなってんだ……?
なぜ現実世界に魔物が存在しているのか、困惑しながら俺は【
「チュウ?」
こちらに気付き、ゴミ箱を漁るのをやめて、俺をみるネズミ。
「もしかして、実験で突然変異したネズミですってか? なはずあるかよ」
魔物は人を傷つける存在。
今ここで俺が倒すしかない!!
「まあ、ここで殺してやるよ」
ネズミに向かって走り出す。
「一撃で仕留めてやるからな……」
そして、剣を縦に振った。
ネズミに剣が刺さる感触がする。
よしッ、そのまま振り切れば──。
紫色の体液を噴きながら、ネズミは横真っ二つになり倒れた。
さてと、一体全体どーなってんだこれ?
「……ッ!!」
目の先、ネズミよりも遥かな魔力を持つ者がこちらに向かって歩いてくるのを感じ取った。
おいおい、本当にどうなってるんだ!?
剣を構え、姿が見えるのを待っていると、
「あなたと戦う気はないわ」
女子生徒のシルエットとともに、女性の声がする。
人間……?
やがて、姿が見えると、俺は目を大きく見開いた。
同じ浜ヶ崎高校に通う同じクラスの女子──白崎冬子の姿がそこにはあったからだ。
白崎もまた、目を大きく見開いた。
「あ、あなた……同じクラスの……」
「え、白崎が……なんで、魔力を?」
次から次へと起こる出来事に俺は理解が追いつかないでいた。
「えーっと、なんとかくん?」
「まあ、関わったことねえし、俺の名前を覚えてるわけねえよな……俺は、静波銀次だ!!」
「ああ!! そうだったわ、静波くんね!!」
白崎冬子。
成績優秀、運動神経抜群、整った容姿。
全てを兼ね備えた彼女が魔力を持っているだなんて。
「あなたも魔術師なのね」
魔術師?
なんだそれ。
「俺が魔術師?」
「それにしても、静波なんて家系知らないわ……そこまで優秀な家系ではないのね。白崎家はわかるでしょ?」
本当にこの人は何を言っているのだろうか。
厨二病かよ。
いきなり家系の話し出すとかよ……ここ二次元じゃねえぞ?
「な、なあ白崎。何言ってんのか意味がわからねえ。俺は魔術師なんかじゃねえ」
「え? なら、なんで魔物を視覚することができたの?」
「はあ? なんだよその言い方。まるで、魔物が見えねえのが普通みてえじゃん」
「その通りよ、魔物を視覚できるのは魔力を持つ者だけ。そして、魔力を持つ者はみな、魔術師の家系なのよ」
なるほど、そういうことか。
俺は元々魔力を持っていなかった。
が、異世界で魔力を身体に宿せるように修行したのだ。
「あんまよくわかんねえけどよ、俺は異世界召喚されてさっきここに帰還したんだ。魔術師なんか知らねえし、俺が魔力あんのも、異世界にいたからだ」
すると、白崎は目をキラキラと輝かせて、
「そそそ、それは本当!?」
「お、おう……」
白崎は俺の両手を掴んで、顔を近づけた。
ち、ちけえ!!
にしても、白崎って本当に可愛いよなあ。
どうなってんだ、この白い肌!?
「正直あなたが何を言っているのか意味がわからないけど、そんなことどうでもいいわ!! あなたが魔術師じゃないのなら、話が早い」
ニヤニヤとしだす白崎。
「私と協力しましょう」
「は?」
「実はね、魔術師は超競争社会なの。魔物をたくさん倒せた者に報酬がたくさん出るの!! もちろん、魔術師同士で組む手もあるけど、それだと喧嘩になりやすいのよね。だから、あなたに報酬の三割をあげるから私と協力して欲しいの!!」
正直言ってめんどくさそうなことに、首を突っ込んでしまうことになることはわかっている。
けれど、本当、可愛いって罪だろ〜!!
「お、おう!!」
俺は即答するのであった。
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