最終章 混在エピローグ&審査結果
<作成中の推理小説パート>
第一段落(ミステリー調)
探偵・御堂 剛は、洋館の玄関先で警察の到着を待っていた。
深い静寂のなか、三人の兄妹を殺めた犯人が執事・三谷と看護師・遠藤であったことを、彼はすでに証明している。
重苦しい空気が張りつめているが、事件は一応の決着をみたはずだった。
だが、まだ何か見落としてはいないか――その疑念が御堂の胸をかすかに締めつける。
第二段落(ハードSF調)
しかし、この洋館にはなお解明されていないハイテク要素が山積している。
屋根に据え付けられた風力タービンは、量子インバータによって高効率エネルギー変換を行い、宅内のセキュリティ端末を稼働させていた。
施錠機構に仕込まれていた極小フックの素材が、未来的な複合材料である可能性も否定できない。
御堂は端末を片手に、ログ解析の最後の一手を打つべきかどうか、迷いを抱いていた。
第三段落(ラブコメ調)
それでも、洋館に残された複雑な空気の中には、儚くも軽やかな恋のきらめきが混じっている。
麻里江を失った悲しみに暮れる探偵の心には、小さな後悔が宿っていた。
もし、あのときもう少しだけ彼女との会話を楽しんでいれば、こんな結末にはならなかったかもしれない。
翔太が抱いていた自由奔放な恋の夢も、今はもう二度と帰ってはこない。
複雑に絡み合う思いの残滓が、廊下を吹きぬける風とともにすり抜けていく。
第四段落(論文調)
次に示す論点は、犯人逮捕の現場における物理的および心理的状況についてである。
第一に、執事・三谷と看護師・遠藤は犯行に使用した鍵の遠隔操作トリックを認めているが、その細部仕様は未だ不明瞭である。
第二に、二人は屋敷の立地条件と警備ログの隙間を利用し、連続密室殺人を実行したことを供述している。
第三に、相続問題をめぐる家族間の争いをいち早く封じ込めようとした結果、殺人に及んだとして動機を説明している。
なお、これらの供述が法的にどこまで有効かどうかは、今後の捜査次第と言えよう。
第五段落(官能小説調)
されど、薄衣の下には、まだ妖艶な秘密が息づいているのかもしれない。
遠藤がどのように三谷と契りを交わし、いかなる甘美な企てのなかでこの罪深い密室殺人を生み出したのか。
闇に溶けるような廊下の隅に、揺らぐ燭火が映し出すのは、互いの熱を感じ合った痕跡――そういった欲望の名残に違いなかった。
探偵・御堂の視線は、その隠されし情事の舞台をまるで覗き見るかのように彷徨するが、今やそれが解かれることはなかった。
第六段落(時代小説調)
かくて時は移ろい、風に吹かれる廊下に静けさが戻る。
朽ちぬかに見えた洋館の秘め事も、今はただ、笹の葉に触れる秋のような儚さを帯びるばかり。
執事と看護師は、さながら下剋上を企む忍びのごとく、神木家に大いなる爪痕を残した。
探偵・御堂は、まるで疲れた武将のように息をつき、遠ざかる足音を見送っている。
ここにおいて、血塗られた密室劇の幕がひとまず降りた。
第七段落(複数スタイル)
しかし、量子揺らぎの残滓に震える扉へ伸ばした御堂の手は、まるで甘酸っぱい青春ドラマのように一瞬ためらい、次の瞬間には戦国の合戦図を映す古文書のページをめくっている。
あふれる欲望を隠しきれない遠藤の白衣は、もはや機能性を逸脱した官能の象徴となり、その脇で論理的に検証を進める資料が床に散乱していた。
「ここには愛も憎悪も罪も、そして科学さえ揃っている。
あとは俺が、どう締めくくるかだけだ」
御堂はそう呟きながら、キーボードのような端末を握りしめ、恋もSF考証も同時に解き明かすかのように微笑んだ。
<文芸グループパート>
「何とか完成して良かったです。ですが…」
オンライン会議の画面に映る駒形 宗次の表情は、やや憔悴気味だ。
「一応、エピローグとしていろんな文体を詰めこんだけど、正直めちゃくちゃカオスじゃないですか」
「まさに闇鍋。なんでも盛り込んでありますね」
北園 七海が面白がるように肩をすくめる。
「でも読者さん、読むの大変そう」
「僕のSF考証は、ほとんど断片的なままで終わってますが」
御子柴 隆士が恨めしそうにリュックを抱え直す。
「量子揺らぎの話とかも描写が弱すぎるし」
「ラブコメパートだって麻里江さん、あっさり退場しちゃいましたし」
七海は口をとがらせたが、すぐに明るい声で続ける。
「まぁ、私としては楽しんで書けましたけど」
「私の時代劇設定も、なんとも中途半端な印象です」
加賀 美里が残念そうに呟きながら、メモを閉じる。
「甲冑の出番とか、結局あんまり説明してないですし」
「官能パートはいいとして、推理部分がおざなりになっている感は否めませんね」
西園寺 凌介が淡々と総評を述べる。
「論理的整合性に欠ける部分が多々あるかと」
そこへ、駒形が厳かな声で発表する。
「えー、雑誌の編集部から結果が届いたんですけど…」
彼はスマホの画面を確認し、そっと眉をしかめる。
「…うわ、ボロクソだ。
『文体が統一されておらず、読者を混乱させるだけ』『推理部分が弱く、SFか恋愛か時代劇か官能か何をしたいのか分からない』って」
「しょうがないよ。普通に考えたら散々な評価になるに決まってます」
御子柴は悲しそうにため息をつく。
七海は「まぁ、逆にすごいって褒めてくれる人もいるかも?」とフォローするが、西園寺は無言で首を振るだけだった。
「私は面白いと思うんだけどね。こういう節操ないコラボも」
加賀 美里が肩をすくめて微笑む。
橘 貴子は「やりきった感があるからいいんじゃない?」と明るい声で賛同する。
駒形はスマホをぽんと机に置き、肩をすくめて笑ってみせる。
「じゃあ…次、どうします?」
すると、六人のうち誰が言い出すより先に、七海がわくわくした声を上げた。
「ホラー大賞、いきましょうよ! どうせなら、今度はホラー小説で応募してみませんか」
「ホラーか…SFやラブコメや時代劇、官能表現も入れられるし、何気に相性いいかもしれない」
御子柴が呟くと、加賀は「戦国怪談みたいなのも書けそう」と目を輝かせる。
貴子は「なら血みどろの愛憎劇もいいかも」と笑みを深めている。
西園寺は小さく頭をかきながらも、「まぁ、また締切に追われるんですか」と半ば呆れ顔だが、どこか楽しげでもあった。
最後に駒形が「うん、それじゃ決まり!」と大きくうなずき、画面越しにガッツポーズを取る。
「次はホラー大賞! 今度こそ、僕たちのコラボで…やれるところまでやってみよう!」
そうして、まったく懲りない文芸グループ「ハッチポッチ」は、新たな地獄のスケジュールを抱えながらも、再び動き出そうとしていた。
文芸グループ「ハッチポッチ」~ごった煮ミステリーの執筆 三坂鳴 @strapyoung
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