後編 伝説の人になりました

「おい! お前、これ!!」

「あぁ、知ってる」

「なら、もっと焦れよ!」

「なんでだよ。焦ったって何も始まらんでしょ」

「いやいや、でも、これは……」

「ま、まぁ。確かに僕もここまでになるとは思わなかった。でも、別に僕の正体がばれたわけじゃないし、まぁ、大丈夫だろ」


 俺の名前は、中野陽太。別名、中野ひな。そう、今SNSで話題沸騰中の謎の1万年に1人の逸材としてバズり中の女子高校生である。

 なんで、こうなったのだろうか。


「おい! これ見ろよ! ひなちゃんを紹介してくれた人に報奨金で1000万くれるってよ」

「は? おかしいだろ。意味分からん、意味分からん」

「あ、この人も、この人も……。あれ、これこういう投稿してる奴ら全員にお前のこと紹介したら俺億万長者になるんじゃね!? 」

「ハハハハハ、オモシロイネ、ソノジョウダン……」


 ま、まさかだよな。冗談に決まってるよな。

 このことが他の奴らにバレたらマジで笑えん。人生終了だ。


「あの日は、お前にいろいろとからかわれたしな……。億万長者に……」

「本当に申し訳ありませんでしたッ! 許してください! 」

「冗談に決まってんだろ。将来、金に困ったら、別だけど……」

「やっぱ、俺らは親友だよな……。あれ? お前、何つった? 」

「………………」

「い、いやぁ、それにしても、まさか、おまえがでんせつになるとはな」

「本当だよ。なんであれくらいで伝説になるんだか……」


 クリスマスの日俺は、コイツと一緒に遊びに出かけた。女装をして。

 そして、その流れで駅前の人の密集地路上ライブを開いた。

 その結果……伝説になった。


 ““マジでなんでだよ!””


 実はこいつと俺は、高校生の匿名バンドとして活動していて、路上ライブハンドかやったことがある。

 クリスマスだったこともあるのか、その日はいつもと比べものにならないほどの多くの人が立ち止まって曲を聴いてくれた。

 いや、分かってる。俺、いや私が原因だろな。

 そして、歌ってるところがSNSで拡散され、まさかの1万年に1人の逸材という言葉がトレンド入り。

 結果、伝説になった。


「はぁ、なんでひなちゃんがこんなににんきになるんだか……。おんなじ曲をおんなじ人間が歌ってるって言うのにな」

「本当、それだよな」

「あ! そうだ、もう、こうなったら今後ずっとひなちゃんでいけばいいんじゃね! 」

「は!? お前、何を言って」

「だって、世間はひなちゃんを必要としてる。俺たちは人気になりたい。ならそうするしかないだろ」

「そ、それは……」

「だって、こんな伝説になるなんてめったにないんだぜ。お前は伝説の人になれるんだぜ」

「………………」

「けんすけくん、つぎはいつどこで路上ライブしよっか? 」


 俺、いや私の伝説伝はまだ続く

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クリぼっちな友人のために女装してデート行ってあげたら伝説になってた 夜咲蒼真@異世界ファンタジー執筆中! @Yorusaki1030

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