第5話 二人の新たなステージ
その後、二人はデュオとしての活動を始めた。陽奈のピアノと蓮のバイオリンが紡ぐ音色は、多くの人々の心を揺さぶり、瞬く間に評判を呼んだ。
ある日のコンサートの後、二人はファンに囲まれていた。その中に、かつて蓮を見放した父親の姿があった。
「蓮……」
父は息子の成長した姿に、言葉を失っていた。
「父さん……久しぶりだね」
蓮の言葉に、父は目を潤ませた。
「お前が、こんなにも立派になったなんて……」
陽奈は蓮の手を握り、優しく微笑んだ。
「蓮君、大丈夫だよ」
蓮は静かに頷いた。
「ありがとう、陽奈。君がいてくれたから、俺はここまで来られたんだ」
その後、二人は世界各地で公演を行い、音楽で多くの人々を癒し、励ました。二人が奏でる音楽は、人々の心に希望の光を灯した。
ある特別な夜、二人は満天の星空の下、あの時の公園で演奏をしていた。観客は誰もいない。ただ二人だけのための音楽だった。
「ねえ、蓮君。これからも一緒に奏でようよ。ずっと、これから先も」
蓮は陽奈の言葉に耳を傾け、そっとバイオリンを置いた。そして、真剣な瞳で陽奈を見つめた。
「陽奈、僕は……君の隣にいると、怖いものなんて何もない気がするんだ。君が僕の支えで、僕の音楽そのものなんだ」
陽奈の胸が高鳴る。蓮の言葉が、心の奥深くまで響いていた。
「蓮君……」
蓮はポケットから、小さな箱を取り出した。
「ずっと伝えたかった。この先の未来も、君と一緒に歩みたい。どんな音色でも、どんな旋律でも、君と一緒に奏でていきたい」
箱の中には、シンプルな指輪が輝いていた。
「陽奈、僕と結婚してくれませんか?」
陽奈は涙を浮かべ、頷いた。
「もちろんだよ。蓮君となら、何度でも新しい音色を奏でられる」
二人は夜空を見上げ、星々が祝福するように輝いていた。
結婚式は、小さな教会で行われた。参列者は家族や親しい友人たちだけ。陽奈は純白のドレスを身にまとい、バージンロードを歩んでいた。
蓮は祭壇の前で、彼女を迎える準備をしていた。
「綺麗だよ、陽奈」
「ありがとう、蓮君。今日は、私たちの新しい始まりだね」
式が終わると、二人は音楽ホールでデュオ演奏を披露した。二人の音色は、愛と希望、未来への誓いを奏でていた。
「蓮君、これからも一緒に……」
「もちろん。何度でも、どんな時でも」
二人の音色は、未来への旋律として、永遠に響き続けるのだった。
花曇りの旋律 霧乃遥翔 @0720hk
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