第6話 宇宙で最初にバレエを踊る私の初公演

くるくる回ったり、助走からの跳んで着地。足や手は上げたり、下ろしたり、キープしたり。

宇宙服を着てのバレエでは、音に合わせての回転や跳んでからの優雅な着地が見所。


観覧席は、シルクハット星人、サツマイモ星人、ブックシェルフ星人のバレエが見たい人。


最後まで踊り終えて、レヴェランス。

私の初公演の演目は終了した。

「紳士淑女の皆様。拍手喝采の代わりに、トーテムポールを作りましょう。」

シルクハット星人が音頭をとり、観覧席にいた人達がトーテムポールを作っていく。


ブックシェルフ星人が一番下の段。スクラムを組むみたいに、何重にも重なっていくブックシェルフ星人。

サツマイモ星人は、同じくらいの背丈で何人かが集まり、下から二段目を担当。背の低い人や高い人は各自でポーズ。

下から三段目より上は、シルクハット星人がグラグラしながら積み上がっていく。


「トーテムポールの完成を見守る方が、自分が踊るときより緊張する。」

私の呟きは、宇宙服の中にこもる。

トーテムポールの完成を応援したい。


私は、指先からつま先まで、伸びやかさを意識したポーズをとる。

宇宙空間で私にできる応援は、バレエのポーズを見せること。


最後の二人になったシルクハット星人が、グラグラのトーテムポールの上に乗ろうとして、連続失敗中。

助走をつけたら、トーテムポールを追い越して着地。

助走をつけないと、乗る高さまで届かない。

私のバレエを観て満足した気持ちを表そうとしてくれているトーテムポールの完成を諦めたくない。


私は、マネージャーのシルクハット星人を呼んだ。

「初公演のお客様限定で、演目を追加したい。」


私は、マネージャーのシルクハット星人と共に、トーテムポールに挑戦しているシルクハット星人に近づく。


「初公演、初観覧のお客様に限り、今からトーテムポール作りを応援する演目をご披露します。」

マネージャーのシルクハット星人の言葉に、シルクハット星人の二人は、やる気をみなぎらせてくれた。

「トーテムポールは、なんとしても成功させる。」

宇宙服を着た私は、シルクハット星人にバレエの飛び方と回転したときの止まり方をレクチャーした。

シルクハット星人の二人は、真上に跳ぶのではなく、横に移動する飛び方と止まり方を何度も練習。


「よし、横に跳んで、トーテムポールの上で制止。出来たぞ。次!」

成功したシルクハット星人は、興奮してゆらゆら。

「ゆらゆらがおさまったら、乗る! 待っとれ!」

トーテムポールのための最後の一人のシルクハット星人は、長縄の位置を確認する人のように、ゆらゆらするシルクハット星人を見定めている。

「うむ。わしは跳ぶ。」

シルクハット星人は、私が教えた通りに跳んで、一番上で止まる。

私は、シルクハット星人に教えた技を二回、トーテムポールの前で決める。


私の初公演は、大成功をおさめ、伝説になった。

初公演の初観覧の人達が、私の応援団になってくれた。

私は、応援団の団員が書いてくれた公演レポートを日本語に翻訳して、マネージャーのシルクハット星人経由で地球にいるお父さんお母さんへ届けている。


お父さんお母さんからの手紙は、マネージャーのシルクハット星人経由で私の手元にくる。

お母さんが、私のバレエの下手さを心配することはもうない。

体に気をつけて、と毎回書かれてくる手紙が嬉しい。

離れて暮らしているからこそ、揺るがない応援が心強い。


演技後の観客によるトーテムポールは、恒例になった。

今日の公演が初めましての宇宙人が。

「トーテムポールに参加したくなるようなバレエを見たい。」

と挨拶してきた。

そういうのは嫌いじゃないよ?

私は、宇宙で踊るバレリーナ。

今日も観覧席の宇宙人を沸かせてにいく。

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宇宙人に誘われて、月でバレエを踊ろう〜観覧席の宇宙人をわかせよう まなか @okafuku

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