エピローグ:未来への希望
数日後、クロウは病院のベッドで目を覚ました。街では物流と交通が復旧し、クロノクラッシュの残党は逮捕されたという。大規模な歴史改変は阻止され、この世界はどうにか崩壊を免れた。
見舞いに来た研究員や政府関係者から、ねぎらいと感謝の言葉を受けつつも、クロウはまだつま先に鈍い痛みを感じていた。動かそうとすると、まるで熱を持ったようにジンジンと響く。
「父さんも、こんな痛みを感じていたんだろうか……」
彼がつぶやき、枕元にある父の古い日誌を開いてみる。そこには、歪んだ歯車のシンボルとともに、短い一文が残されていた。
“守るべきものは、先にある時間。足先を踏みしめてこそ、未来は見える。”
どんな世界にも歪みはあり、理不尽もある。しかし時間を捨てて全てをやり直すのではなく、痛みをこらえながらでも前へ進むこと――それこそが父の選んだ道だった。
「もう一度、俺は立ち上がるさ」
クロウは包帯の巻かれた足をそっと動かす。痛みはまだ引かないが、その奥には確かな脈動が感じられる。自分たちの歩む先に、全く新しい未来があると信じたからこそ、父も最後の一歩を踏んだのだろう。
窓から差し込む朝日の中、クロウはつま先に意識を集中させる。世界が大きく変わる日は遠いかもしれないが、彼は“時踏み職人”として、また一歩踏み出す準備を始めていた。
つま先で“時間”を踏む職人 横浜県 @makenyoko
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