隠されたつま先

星見守灯也

隠されたつま先

「髪染めないの?」

「ピアス開けないの?」

「もっとおしゃれな服着たらどう?」

「ネイルしたら?」


 知ったことか。

 バッチリ染めた髪で、ガッツリ開けたピアスで、キンキラキンの衣装で、ゴテゴテのネイルで、「いちいち言うな。好きなことさせろ」と叫びながら、私がそれをしないのに口を出してくる。知ったことか。


 私がネイルしているのを知らないくせに。




「ただいまー」


 靴を脱ぎ、誰もいないフローリングに靴下を落とす。


 いち、にい、さん、しい、ご。

 こっちも、いち、にい、さん、しい、ご。


 つま先にはきれいに整えられた爪。

 今は黒と赤を交互に。先端には金を乗せて。


 おしゃれは自分のためというのなら、これは私の究極のおしゃれだ。

 髪を染め、ピアスをし、服を着るのと変わらない。


 ただ、あなたたちが知らないだけ。




「お風呂入ろ」


 お風呂でマッサージして、やすりで整え、甘皮をとる。


 足の爪がキレイだという、それだけで、私は世界に優しくいられるのだ。

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隠されたつま先 星見守灯也 @hoshimi_motoya

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