140字小説集
雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐
No.1〜No.14
1
「なあ、レンコンは未来を見通すって言うよな?」
「それくらい知ってるさ」
「じゃあ、弁当に入っているレンコンで、黒板を見てみろよ」
僕は渋々、悪友の言う通りにする。
黒板に書かれていたのは、僕と好きな人の相合傘だった。
2
「今年こそは痩せるわよ」
「それ、無理だろ」
「なんでよ」
「今年は巳年だろ」
「だから?」
「重いってことさ、ヘビーってね」
3
僕は初日の出を見に近くの山に登っていた。
「なんで、あいつは断ったのかな」
何度誘っても「遠慮しておくよ」の一点張りだった。「太陽は苦手なんだ」と、冗談のように笑って。
翌日、新聞にこんな記事が載っていた。「ドラキュラ、初日の出で死す」と。
4
昔々、お爺さんとお婆さんがいました。お爺さんは山に死体を埋めに、お婆さんは川に手についた血を流しに行きました。そうすると、桃が流れてきました。切ると子供が出てきました。しかし、切る時に体ごと切ってしまいました。「また、山へ行かなくては」お爺さんはため息をつきました。
5
「一番最初に売れるのは、気分がいいだろうな」と、一番上の本が言う。
「いいな、僕が売れるのは二番目だよ」
「お、客がやって来たぞ!」
客は一番上の本をどけると、二番目の本を手に取る。
「一番上の本は、立ち読みで傷んでいるから嫌なのよね」
6
「初夢は何かな。富士山だといいけれど」
「夢を見ないパターンもあるだろ。俺はお前のいびきで寝れないかもな」
「ごめんごめん」
「まあ、明日の朝のお楽しみさ。もし、起きれたらだけど」
私が振り返ると、バットを持った夫の姿があった。
7
「ほら、中に詰めて。どんどん奥に行ってよ!」
「そんなに押すなって」
「後ろを見なさい。あとがつっかえているのよ」
ぎゅうぎゅうと押し込まれる。
「ねえ、お母さん。手作りソーセージまだ?」
8
「お前をハンザキにしてやる!」と闇の魔法使い。
「上下バッサリと切り離すってか? この頑丈な鎧の上から? 無理だって」と勇者。
「くらえ!」魔法の杖が光る。
すると、勇者の姿はオオサンショウウオに変わっていた。
「ハンザキってオオサンショウウオのことかよ……」
9
「あなた、私とくっつかない?」
「結婚しろってか? お断りするね」
「まあ、ひどい!」
「おいおい、無理やりくっついてくるなよ……」
「これで、一生離さないわよ」
「ねえ、ママ。磁石ってカップルなの?」
子供が机の上の磁石を指して言った。
10
「君はアンドロイドだ」
「はい、私はアンドロイドです」
「じゃあ、俺の命令に従えよ?」
「はい」
「よし、一緒に夕飯を食べよう」
「それは、無理です。私はアンドロイド、いえAndroidですから」
11
「ねえ、鎌倉に行こうよ!」
「おいおい、今からか? ここは北海道だぞ」
腕時計は夕方6時を示している。
「鎌倉に連れてってよー」
いくら息子にごねられても無理なものは無理だ。待てよ。
「よし、連れてってやる」
「本当!?」
「ほら、これもかまくらだろ?」
俺はスコップで雪をかき集めて言った。
12
「ねえ、赤色って緊張感や興奮を引き起こす色って知ってる?」
「いや、初めて知ったよ。血や火を見ると緊張するのも、それが一つの理由なのかもしれない」
「そうね。じゃあ、今から赤色で緊張させてあげる」
彼女は何も赤いものを持っていない。
「はい、どうぞ」
朱色の唇を突き出して言った。
13
「ピザって10回言って!」
「引っかかるわけないじゃん」
私は10回ピザと言う。
「じゃあ、これは?」
「ひじ! あ……」
「正解はビザでした」
14
「今日は13日の金曜日だな」
「ちょっと、不吉なこと言わないでよ!」
「いや、事実だろ」
「そうだけど……。あれ、カレンダー見てよ!」
「ううん? 大安!?」
「そうみたいね。どうせなら、仏滅が良かったのに」
140字小説集 雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐 @AmemiyaTooru1993
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