第7章:私たちの物語
一年後の春。「メゾン・ド・フルール」と「Blooming Days」は、公式にコラボレーションを開始した。結と七緒が中心となって企画した「フローラル・シンフォニー」という特別なイベントは、香りと花のハーモニーを楽しむ新しい試みとして注目を集めていた。
二人は一緒に暮らし始めていた。結が住んでいたマンションに七緒が移り住み、部屋は花と香りに満ちた特別な空間となっていた。
「ねえ、結」
休日の朝、バルコニーで七緒が結を呼んだ。二人の間では、もう敬語は使わなくなっていた。
「なあに?」
「私たちの出会いって、運命だったのかな」
七緒は結の腕の中で、しっとりと言った。
「そうね。でも、運命以上のものだと思うわ」
「どういうこと?」
「運命は与えられるものだけど、私たちは自分たちの意思で選び合ったから。それはもっと、特別なことじゃないかしら」
結の言葉に、七緒は幸せそうに微笑んだ。
「そうだね。私たち、これからもずっと一緒に物語を紡いでいけるんだね」
「ええ。香りと花に導かれて、二人だけの物語を」
バルコニーに置かれた鉢植えのアイリスが、優しく風に揺れていた。その横では、『シークレット・ペタル』の小瓶が、朝日に輝いている。
結は七緒を抱き寄せ、その髪に優しくキスをした。春の風が二人を包み、新しい季節の始まりを告げていた。
「愛してるわ」
「私も、愛してる」
二人の言葉が、花々の香りと共に、青い空へと溶けていった。
(終わり)
【百合短編小説】「シークレット・ペタル ~その想いは花の香りとともに~」(約6,900字) 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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