墜落

風馬

第1話

俺は颯爽と空を滑空している。

澄み渡る空、ふんわりとしたやさしい形の雲、ギラギラと照らす太陽。

光を浴びた機体は、俺の意思と同様に空を駆け巡る。

「やはり、空は気持ちがいいゼ。空は俺の故郷だ」

そうだ、宙返りをしてみよう。

俺は、機体を起こし宙返りをした。

地や海がが上になり、太陽が眼下にみえる。

地上にいる人々がびっくりする。

当然だ、俺の技術では、こんなのは軽い方だ。

びっくりする人々の上を滑空する。

俺は得意満面になり、満足する。

さて、今度は、何をしよう。

そうだ、ひたすら上昇してみよう。

雲を越え、さらにそのかなたへ。

俺は上昇した。ただひたすら・・・。見えるはずの無い先をめがけて。


どのくらい上昇しただろう。

地上の人々はもう見えない。

その時だった、機体に異常を感じた。

「おかしい。どうしたんだ。上昇するんだ」

機体はガクガクと揺れる。

俺は不安を感じた。もしやという疑念が走る。

今まで、はるか上空まで上がった機体は、その効力を失い徐々に地にめがけて滑空し始めた。

まだ、地上までの時間はある。

ゆっくり対処しよう。

まず、水平に機体を保とう。

そうすれば、最悪の事態は免れる。

その、意思とは裏腹に機体は更に速度を速め、はっきりと目標を地と定めた。

俺は、最後の最後まで諦めないぞ。断固として上に向かうんだ。

だが、機体に重力に逆らえるほどの力は残っていなかった。

空色に輝く機体は、虚しく地上に激突した。

俺と言う乗客を乗せたまま。


墜落した?しょうがないよ。それが、俺、紙飛行機の宿命だから。

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墜落 風馬 @pervect0731

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