第5話 散り逝く紅葉

「誰かテメェなんか迎えに来るか!ばかやろうぉ!」俺は、飛び込んだ勢いで心葉に馬乗りになっていた。

「紅葉……何で…生きて…」

「ん?ああ…ちゃんと死んでるぜ!お前が自殺なんてくだらねぇ事しようとしてっから、化けて出てやったわ!」

「だっだってー」心葉は、腕で目を覆い涙を拭っている。

 俺と心葉は、トラックの光に包まれた後、白くだだっ広い空間に居た。その空間には、大きな扉、その反対方向には、終着が見えない程長い階段がある。

「つうかここどこだよ…」と俺は、周りを見渡す。

「私は、何処だっていいよ…紅葉と会えたんだもん…グスン…」心葉は、自分の膝に顔を埋めている。

「そうは、言ってもよ!お前をここから出さねぇとな…」俺は、頭を掻く。

「何よ!久々に会えたって言うのにもう別れの相談⁉︎ここから出たらまた紅葉、居なくなっちゃうじゃん!」

「ばか!俺は、お前の為を思ってだな…」

「何よ!何よ!勝手に死んじゃって…」

「勝手にっておまっ…」

「勝手に私を一人にして…責任とってよ…」心葉は、再び泣き始めてしまった。

「……………ごめん……それは、出来ねぇ………」

 心葉は、余計泣いてしまっている。そして、俺は、心葉を抱き寄せた。

「…なんでよ……ばか……ばか…」

「心葉は、お前は、生きて幸せになるんだ…田中や霊子や皆んなと卒業して大学行ったりすんだろくぅ〜生きたかったー!」俺は、天を仰ぎ見ながら目から涙が溢れて来た。

「……やだ……紅葉と一緒じゃないとやだよ……」心は、俺の胸を叩きながら泣いている。

「そんでさぁっ…成人して心葉なんか首元にこんなでっかいファー付けた振り袖何か来ちゃってよ!似合ってんだろうなー!グスン…」

「…生きて……グスン……見てよ……」

「結婚してよぉっ…グスン…ウェディングドレスも見て見たかったなー!田中と俺がふざけて心葉が怒ったりしてな…イヒッ」

「………着せてよ……」と心葉は、俺の服を強く握ってくる。

「子供何か出来ちゃって、泥だらけの子供が家中走り回って心葉がそれを追いかけてそんで俺は、横で笑ってたら心葉に怒られたりしてさ…グスン…楽しいだろうなー!」

「………スン……スン……スン…」

「爺さん婆さんになっても喧嘩してんの…」

「……帰ろうよ!」と心葉は、叫んだ。

「……ダメだ…お前は、まだ死んじゃいないんだから…帰らないと…」俺は、大きい扉を指差した。感覚的に俺は、わかったていた。あの大きな扉が俺達が元居た所に通じていると、そして、階段は、あの世に通じている事に…

 心葉は、扉の方を向きまた俺の胸をに顔を埋めた。

「…………ギリッ………」

「俺…成仏出来なかった理由わかったわ…」

「…何?…………スン…」

「俺は、心葉が好きだ……」

「……何でこのタイミングなのよ……」

「たぶん……生きてた時に一度も俺から言ってなかったからだと思う…だから好きだ…」

「………もっと………言って……」

「気の強い所が好きだ…ちょっとした事で喜ぶ笑顔が好きだ!」

「……もっと…………」

「面倒見の良い所が好きだ!そう言う事全部引っくるめた紅 心葉が大好きだ…」

「……………………」俺達は、無言のまま強く抱き締め合った。


「…ありがとう…紅葉…」

「大丈夫か?」

「うんっ」と心葉は、俺から少し離れ腕を後ろに回し指を交差させながらこう言った。

「あーあっ私戻ったら彼氏つーくろっと!」

「おう!作れ!作って人生を謳歌して来い!イヒッ」

「まぁ私が本気出したらモテ過ぎて困っちゃうなーイヒッ」

「俺だって天使か悪魔の女の子達にモテモテだっての!」

「プフッそれは、ないわ!紅葉に惚れる子は、私しかいないもん笑」

「はぁ?舐めんじゃねぇよ笑」

「じゃあね…」

「おう!」

 俺達は、お互い反対方向に歩みを始めた…そして二人共光の中に消えていった。


「心葉さん!心葉さん!」

「心葉ちゃん!」

 心葉は、目の前には、心葉の肩を揺らす霊子と田中の姿だった。心は、電柱の隣に数分座り込んで居たらしい。

「心葉さん大丈夫だった?秋山くんは?」

 心葉は、立ち上がり数歩、歩いた後、口を開いた。

「……たぶん天国に行ったよ……」と心葉は、優しく微笑んだ。

 


 数日後…

 心葉、霊子、田中は、河川敷を通り登校していた。

 「でも…ああ言う事もあんだな〜」と田中は、頭の後ろで手を合わせて喋り始めた。

 「ちょっと心葉さんの気持ち考えなよ!」霊子は、田中を嗜める。

「大丈夫だよ!霊子ちゃん!紅葉も私が暗いとまた化けて出て来そうだしね笑」

「それはありそう…」と霊子は、困惑している。

「絶対あれだよ!天使のケツ追っかけてるぜ!」

「言えてる!」

「アハハハアハハハ」河川敷に三人の笑い声が響いていた。

 舞った紅葉が心葉の髪へと舞い降り…

心葉は、それを手に取り優しく微笑んだ…

 

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秋の扇 ikki @Adgjkl33

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