ツマサキ<カクコン10短編:お題で執筆!! 短編創作フェス③「つま先」>
タカナシ トーヤ
行く年
「今年も一年お疲れ様」
「あなたもね」
年の瀬の夕暮れ。
落ちかかった夕日を眺めながら夫婦はふたり寄り添っている。
「腹へったな。そろそろメシにすっか」
「そうね…でも…」
妻はゲームを終了し、スイッチを押す。
「あなた、最近、ずっとゲームとデスクワークばかりだし、肩とか凝っているんじゃない?」
そう言って妻は夫の肩にそっと手を添える。
「あぁ、ありがと。揉んでくれんの?助かる。」
夫は妻に身を委ねる。
「横になって」
妻はそっと夫を抱きかかえ、うつ伏せにしてベットへと押し倒す。
「最近全然外にも出てないし、運動とかもしてないでしょ?少し筋肉ほぐさないと、カチカチになっちゃうわよ」
そういって妻は夫の背中に
「あぁ、すでにカチカチだ。」
妻のか細い手が
首から背中、腰まわり、そしてその下までゆっくりと深く指圧し、ほぐしていく。
「あ、そこ…」
「ここ?」
「そうそう。もうちょっと強く」
「こう?」
「あぁ、そこそこ。イイ…」
「ふふっ。気持ちいい?じゃあ、おしまい。」
「ええっ!?なんで!!」
「いつもあなたが先に気持ちよくなるでしょう?今日は、アタシが先がいいの。」
「ご…ごめん、お…俺もするからさ…」
夫は起き上がり妻を背中から抱くと、首から鎖骨、その下へ向かってマッサージを始める。
「どう?柔らかくなってきた?うふふ。」
妻は夫の頭に手を伸ばし、柔らかな髪を優しく撫でる。
「う…うん、すごく…」
「ふふっ…ねぇ、足ツボもやってよ。」
「足ツボ??」
「そう。足の裏って実はツボがいっぱいあって、不眠とか、頭痛とか、色々な不調に効果があるのよ」
「そうか…最近、お疲れだもんな。わかったよ。」
夫はベットから降り、床に座り込むと妻の足を自分の太腿の上に乗せる。
「どこがいいの?」
「そうね、つま先、例えば親指だと頭痛に効くとかあるけど…別に1本づつじゃなくてもいいわ」
「そっか、じゃあ3本同時にいくか」
夫は妻のツボを数本の指で同時に刺激していく。
「あ、そうそう…いいわ…」
夫は妻のツボを探しながら、あちこちを指圧していく。
「気持ちいい…」
「ねぇ待って、上手…」
「…あっ…」
妻の表情が歪み
指先が
ピーン…
…ポーン
「…………え?」
「あ、ごめーん。アタシの頼んでた荷物、届いたみたいだわ。」
そう言い残すと、バタバタとスリッパの音を立て
妻は先に いってしまった。
Fin
ツマサキ<カクコン10短編:お題で執筆!! 短編創作フェス③「つま先」> タカナシ トーヤ @takanashi108
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