おとなにはないしょ。③

おとなにはないしょ

　ねえねえよこちん、どうしたのそんなとこ押さえて。

　それは聞かないほうがいいと思うんだ。

　どうしてなの？

　おとなのじじょうってやつさ。

　でも知りたいな。

　どうしても知りたいの？

　うん、知りたい。

　おとなにはないしょだよ。

　うん、ないしょないしょ。

　机のかどにぶつけたんだよ。

　よこちん痛そう。

　こんなのへっちゃらさ。

　見てもいい？

　見ない方がいいと思うよ。

　どうしてなの？

　おとなのじじょうってやつさ。

　でも、見たいな。

　どうしても？

　うん、どうしても。

　おとなにはないしょだよ？

　うん、ないしょないしょ。

　じゃあ、はしっこを持ってそっと下げてくれるかい？

　うん、わかった。

　ちょっとはずかしいな。

　赤くなったよこちん、かわいい。

　どうだい？

　ちょっと変なにおいするよ？

　それはかがないほうがいいと思うんだ。

　てへ、でも気になっちゃって。

　それで、どうだい？

　うん、すきかも。

　いや、それはかがないほうがいいと思うんだよ。

　よこちんのにおいすき。

　きみは変なコだね。

　えへへ。

　それより、ぼくのちょっとはれてないかな？

　うん、よこちんの先っぽはれてて痛そう。

　ちょっとさわってみるかい？

　いいの？　ツンツン。

　はうっ。

　よこちん痛かったの？　ごめんね？

　いいんだ、次はなでてみる？

　うん、いいこいいこ。

　はいっ。

　どうしたのよこちん？　変な声だして。

　いや、ありがとう。痛くなくなったみたい。

　ふふ、よこちんはいつもおもしろいね。

　このことは、ふたりだけのないしょだよ？

　うん、ないしょないしょ。

　ぼくが机のかどにつま先をぶつけていっぱい泣いたのは、おとなにはないしょないしょ。