『完成』とは『おわり』である。

 こうして、たった一日ですいぶん『おそろしい魔法』が増えた。

 たとえば『爆薬』の実物ないすか?って言ったらさらっと『錬金』でいくつも見せてくれたので後は私単体でおっかねえ爆薬がいくつもできた。

 まあ実験大好き『博士』の入れ知恵で『核』は作れるんだけど作る気はないし、その存在も誰にも教える気はない。

 爆薬からの連想で爆発的に一瞬だけ魔力噴射して『加速する魔法』とかもできたし……

 魔力装甲に至っては一時間で六層複合式なんてのまで出来ちまった。


「このどれもが『完成』されててなおかつ『誰でも覚えられる』汎用魔法なのがおそろしいですね。まあそうなるように作ったんですけど」

「ああ、戦場が変わるな」

「あれ?これ私の死人兵がただの的になるんじゃない?」

「まあ……そうならない方法も私は思いつくけど、今日は勘弁してくれよ……これまとめて明日の朝刊で広めなきゃいけねえんだ」


 これたぶん、実用化されたらねー。

 みんな音速でカッ飛びながら一秒に何百発も弾丸撃ち合って、炎でも雷でも平気な顔して進軍してくるこの世の終わりみたいな戦争になるんだよなあ……!

 なんか……なんか、ジャンルが違う!私たちの知ってる戦争じゃねえよこれもう。

 でもやるんだよ~!勝つためにやる!!


「ヒント!じゃあヒントくれたらまとめを手伝うわ!」

「ああ、じゃあお前の死人兵の本質的な欠点な、生前の技量関係ないことで、利点はお前の操縦技術依存なところだよ。あと『錬金』は金属鎧も作れるぞ」

「あ」


 ミスラの顔が点になったわ。気づいちゃったか~『完成』。

 思ったより頭回るんだねごめんね。


「あ~……すいませんタバコいい?かしら?」

「私に聞くなよイシュトアン様の家だぞ」

「うむ、吸うが良い」


 そっと灰皿おいてくれる優しさだよ……

 ミスラの指がぶるっぶる震えてんのウケる。


「これ……って……人形でよかったかんじ……かしら?」

「そうだね、別に死人である必要ないね。達人である意味もないね」

「じゃあ私の死人兵の魔法の『完成』って……ただの『錬金』で人形作って動かすだけ?」

「たぶんね。でもそれはそれでお前の操作技術は無駄にならないし、『契約』は『契約』で莫大な魔力のもとになってるから結果的にどれも腐らない技術じゃん」

「そ、そうね!死人と違ってね!はは……ハハハ……」


 不意打ちで『完成』と『今までの努力が無駄だった事』をくらっちゃったミスラから虚しい笑いが響く。


「改良!ほら改良の余地まだきっとあるから!な?」

「そうね、うん。そうね……」


 虚ろに微笑みながらタバコの吸殻をいじいじしているミスラ。

 幼児退行してる……ショックが大きかったようだ。


「イシュトアン様、ミスラがこうなっちまったんでお礼は明後日あたりに……」

「うむ、良き時間であった。ワシは楽しかったぞ。ミスラを慰めてやるがよい」

「あ、はい」


 それからミスラは寝るまで三歳児くらいの受け答えでめちゃくちゃ私に甘えてた。


「きっとだいじょうぶよね?これで『完成おわり』じゃないわよね?」

「うんうん、いけるっていけるって」

「まだ何かやることあるわよね?きっとまだなにかおもいつくもの」

「できるできる、お前ならできるよ~」


 不本意な『完成』ってマジ恐怖なんだな……生きがいなくなるもんな。

 ごめんて。

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【グレートジャーニー】~無感情な魔族をロックの虜に!酒に料理に堕落させる~ 照喜名 是空 @amnesia939

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