雪女よりもクールな退魔師が、雪女を溶かすまで。

米太郎

第1話

 雪女が出ると言われる山。

 雪女とは、この雪山で死んだ女性のなれの果て。


 今日も一人、山小屋へと迷い込んできたみたい。


 ドアが開くと猛吹雪と一緒に、男が家の中へと入ってきた。



「……はぁ、家があって助かったぜ。……ったく、なんでこんな吹雪なんだよ。やってらんねーな」


 背丈は180Cmくらいというところだろうか、すらりと長い足が際立つ男。雪まみれの上着を脱ぐと、整った容姿が見えた。男だというのに、綺麗という言葉が似合う。



 今回は、と言っていいだろう。

 今夜、私はこの男と一夜をともにして、この男を氷漬けにする。さぞ綺麗にな氷像となるだろう。傍に置いて、この冬の寂しさを紛らわすとしよう。



「もしもし、そこの殿方。こんな寒い日に、いかがなされました?」


「あぁ。猛吹雪に襲われちまってな」



「さぞ大変だったでしょう。今夜は一晩ここに泊まると良い。夜明けには吹雪もおさまるだろうよ」


「なるほど。それはありがたい申し出だ。恩に着る」



 物分かりが良くて、受け答えも申し分ない。話がスムーズに伝わる。声も良いし。頭も相当切れるのだろう。そして、何より見た目がすごくタイプ。かなりの上玉が来たようじゃ。ふふふ。



 そう思っていると、男はいきなり服を脱ぎだした。あらわになる細身なマッチョ姿。筋骨隆々な腕と、しまりの良い腹直筋。溶けた雪が、輝いて見える。



「はぁー……。雪っていうのは、冷たくてかなわないな。服が濡れちまってさ。この家に風呂とかは無いのか? できれば頂きたい」


「は、はい。あります……です……。今、沸かしますわ」



「あぁ、急がせてすまない」



 中々に、展開が早い殿方ですわ。いきなり脱ぎますし。


 ……っと、もう下の方も脱ぎだしてしまって。


 あっ……。下半身の方も……。好みかもしれない……。




 なんて、いけないいけない。


 とりあえずお風呂に入れてしまって。その後は、そのまま冷やしていけば、氷漬けにできるわ。ふふ。


 丁寧に対応を返そうとするも、クレバーな男は冷たい目線をこちらに向けてきた。



「ちょっと寒すぎて、待ってらんない。準備しながらでいいから風呂に入っていいか?」


「えっ、あ、はい。わかりましたわ。すぐに」



 現代におけるログハウスは、すぐに急騰ができるので問題はなし。

 ただ、私の気持ちの整理がついてなかったりしますわ、深呼吸でもして気持ちを落ち着けなくては……。



「先に俺が入ってるから、お前も後から入ってこいよ」


「えっ……、いや、私はお風呂に入るつもりは無くって……?」




「えっ? 俺、風呂入ってないヤツと、嫌なんだけど?」


「す、するっ?! 何をするっておっしゃってますか……?」



 全てを見透かしたような目でこちらを見てくる。細長の目が、私を凍らせてしまいそうなくらい冷たく突き刺さる。



「んなこと言わせるの?」


「い、いえ。聞いてみただけです……」



「どちらかと言うと、攻められる方が好きなんでしょ?」


「え、あ……えっと……」



 この男のペースにハマっている気がする。それも嫌ではなく、なんだか心地良い。この男にすべてを受け入れて欲しくなってくる……。


 けれども、雪女としての矜恃が邪魔をして素直になれない私もいる。大人対応をせねばと、取り繕う。



「特に何も考えていないのですけれども。けれども、そこまで言うなら一緒に入らせてもらおうと思います。せっかくの客人なので、お背中流させて下さい」



 私の返答に、男は冷たい目線で返す。



「したい方が、はっきり言わないとダメじゃない?」



 私は背中にゾクゾクと駆け回る熱いものを感じた。この男の攻め方、好きかもしれない……。



「私に、あなたの全身を洗わせてください。……で、できれば私のことも、あの……」


「……はっきりしな?」



「あ、あの、私のことも洗ってください……」



 そこまで言うと、男は笑いながら抱きしめてくれた。脱ぎたての身体は今まで抱いてきた男よりも熱く感じられた。

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雪女よりもクールな退魔師が、雪女を溶かすまで。 米太郎 @tahoshi

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