激動?の一日
原田楓香
激動?の一日
年末を迎え、仕事納めの翌日。
家中のカーテンをはずして洗濯し、窓を拭き、水回りの掃除、床のモップがけ、掃除機をかける、などなど、やりたいことは山ほどある。
カーテンを洗濯機で回し、手始めにトイレ掃除を始める。床に泡の洗剤をかけて拭き、隅の方のホコリをとる。一連の作業をトイレットペーパーを使って行った。便器にまあまあ多めのトイペがたまった。うむ。後は流せば終了だ。
だが。ここで悲劇?が起きた。大量のペーパーは流れることを拒まれ、水が便器のフチ近くまでせり上がってきた。
あああ。
なすすべもなく、じ~っと見ていると、やがてジワジワと水は抜けていった。
やれやれ。
あらためてレバーを動かす。水は再びフチまでせり上がる。
あああ。あかん。激しくうろたえつつ、じ~っと見る。見つめる。祈りを込めて。お願い。流れて。
そういえば。
3ヶ月ほど前から、点検ボタンが赤く点灯していた。心配なので、便器のフタに書いてある番号に電話したが、いくらかけてもいつかけても、全くつながらない。
しかたない。しばらく様子を見ていよう。
そう思って対応を先送りにしていた。いつだったか、テレビの占いで、問題を先送りしてはいけない、とか言ってたな。
しかし、ときすでに遅し。私は先送りしてしまった後だ。
後悔先に立たず。ほんま、昔の人はようこんなぴったりの言葉を考えはったもんや。……いや、感心している場合ではない。
おそらく、この不吉な赤ランプは、今日のこの事件の予兆だったのやもしれぬ。
これはゆゆしき事態とみた。むだとしりつつ便器のフタの番号に電話するが当然通じない。
そうだ。某ガス会社の、お家のお困りごとに対応します、という番号にかける。幸い、すぐに電話がつながり、さっそく、修理の業者さんに連絡を取ってくれた。
業者さんから電話がかかってきて、
「みんな出払っているので、夜7時から9時の間やったら行けます」とのこと。ありがたい。何時であろうとかまわぬ。来てくれたら。
「直せるかどうか状態を見て、すぐに直せない場合は、あさって月曜日にあらためて行かせてもらうことになります」
かまわない。とにかく来てくれれば。
カーテンの洗濯を終え、とりあえず、自身に風雲急を告げる事態が訪れる前に家を出て、自転車で8分ほどのスーパーに行く。買い物ついでに、ひとまず用を足す。
よしよし。これで当面はしのげる。
もし、今晩なおらなかったら? そのときは、自転車で6分ほどの24時間営業のスーパーに毎回ダッシュか?
いや、もしも、修理が月曜日に持ち越しとか、最悪、年明けとかになったら、実家に布団を抱えて泊めてもらいに行くしかないか。だが、スマホも受信しにくい上に、ネット環境の全くない場所で耐えられるのか、自分。
不安が心をよぎる、いや、心を占める。
だが、そこへいけば、ネット環境はなくてもトイレがある。
そう。今、最大に優先すべきはそこだ。
覚悟を決めたところに、電話がかかってきた。「急に手が空いた人が出たので、あと1時間ほどで、そちらに行けますが、どうしますか」とのこと。
あと4時間ほど待たねばならなかったはずが、そんな早くに来てもらえるなんて。大歓迎だ。
来てくださった業者さんは、手際も感じもよく、ペーパーを流して詰まっただけなら、大丈夫ですよ。といってくれた。
そして、無事、事態は解決した。
感謝と感激で胸がいっぱいになる。
そう。不安なときに、「大丈夫ですよ」のひと言は、とても大きい。そのひと言で、どれだけ救われた気持ちになるか。
彼は、「自分ところの会社は24時間対応で、今日は当直なんです」と話していた。ガス会社と提携しているけど、ガスより水回りの修理で出かけることの方が多いとのこと。
「トイレの詰まり用に、『スッポンてするやつ』、買っとくといいですよ。そんなに高くないし。ペーパーは溶けるから、少し時間置いて流す、というのも手ですよ」と教えてくれた。
激動?の一日を乗り越えて、一夜明けた今日、私が『スッポンてするやつ』を買いに行ったのは言うまでもない。
教訓:ペーパーは大量に流さない。(当たり前?)
激動?の一日 原田楓香 @harada_f
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