乙女の修羅場?

 炎天下に見舞われている夏休み5日目の早朝。

 杏夏から映画に誘われてしまった僕は、強制的に蜃気楼しんきろうのような街に繰り出していた。

 燦々と輝く太陽は実に暑苦しく、街に溢れかえっている人混みからは湯気が出ている。

 あれほどまでに愛おしく思えた夏の図々しさは、数日もするとただの偽善にしか思えなくなっていた。

 本来の僕ならば杏夏の誘いを断っていただろうが、流石に命の恩人からのささやかな願いを無碍に出来るほど屈強な個は持ち合わせていない。

「あつ」

 ちょうど同じ時間に家を出た為、駅まで目的地が同じである侑芽も、右隣で気怠げに歩みを進めていた。

「最近はほぼ毎日塾に行ってて凄いな」

「そう?受験生なら普通だろ」

 侑芽は暴力的なまでに鋭利な太陽光を左手で防ぎながら、ぶっきらぼうに呟いた。

 そよ風でスラスラと艶めかしいく揺れている黒髪ロングの髪は、太陽光を満遍なく吸収していて、美しさと儚さが共依存関係として成り立っている。

 満点の空を連想させる水色と可能性の象徴である白色の縞々しましま模様が施されたシャツの上に、ぶかぶかの白いパーカーを羽織り、どこか危うさすら感じるほどに際どく短くて薄い灰色のスカートを穿いている様は、まさに思春期真っ盛りの女子高生と言う感じだ。

まあ、それにしても露出が多すぎると言う事でおじさんは相当ヤキモキしているらしいのだが。

「塾なんて勉強しに行くだけなんだから、そんなお洒落しなくてもいいんじゃないか?」

「は?うるさ。彼女出来た事ない秀一に言われたくないんだけど」

夏の暑さにやられたのか、或いは地雷に触れてしまったせいか定かではないが、気まずい沈黙がに陥る。

普段は邪魔でしかない街の喧騒も、僕たちの何とも言えない気まずさを掻き消してくれているようで、少し頼もしく思えた。

「…」

「…」

僕たちが意図的に作り出した静寂を完膚なきまで破壊するかの如く、前方から純白のワンピースを着た、まるで西洋の姫君のような美少女が全力疾走で駆け寄ってくる。

ハイヒールをカッカッカとリズミカルに鳴らし、太陽よりも神々しく扇情的な銀髪ショートを乙女を感じさせる仕草でたなびかせている美少女は、最近僕の心を乱してくる姫宮 杏夏だった。

駅前で待ち合わせのはずだったが、おそらくは待ちきれなかったのだろう。

「ふぅ〜ん。へ〜…彼女いたんだね。君」


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僕を裏切った幼馴染が今更付き纏って来たんがが、ナニソレオイシイノ 【再投稿】 はなびえ @hanabie

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