スーパーワン
入谷慶
第1話
あるお家に、ゴールデン・レトリバーのレオンというわんちゃんがいました。
レオンの飼い主は若い夫婦で、レオンは優しい二人のことが大好き。毎日レオンのしっぽは大忙しです。
美味しいごはんに大好きな散歩、お休みの日には二人とお出かけをして楽しく過ごしていました。
やがて、夫婦には赤ちゃんが産まれました。
ルイと名付けられた赤ちゃんはレオンにとって弟のように思えました。
子育てやお仕事で大変そうな夫婦を見て、レオンはルイのお世話を手伝うことに決めます。
ルイと並んでお昼寝をしたり、一緒にオモチャで遊ぶレオンを、夫婦も温かい目で見守りました。
そうしてルイはすくすくと育ち、いつのまにか一人で歩けるようになっていました。
そんなある日、夫婦がほんの少しルイから目を離した隙に、なんとルイはひとりで家の外に出てしまいます。
ルイがいなくなったことに気付いたレオンは大慌て。
なぜならレオンはお散歩やお出かけの時はママかパパと一緒でなければいけないことを知っているからです。
レオンが大きな声で鳴いて、夫婦に大変なことが起きているのを知らせると、夫婦は急いでルイを探しに出かけていきました。
残されたレオンは始めのうち、家の中で大人しくしていましたが、やがてルイを探しに行くことを決めます。
ルイは夫婦だけでなくレオンにとっても大切な存在だからです。
レオンはルイの大好きなのぬいぐるみの匂いを覚えて、すぐに家を飛び出しました。
ルイの匂いを追いかけて公園にたどり着いたレオンは、滑り台の下や木の裏を探しますが、ルイの姿はどこにも見えません。
さらに道を進んで、川の近くまでやってきたレオンは、ルイが川辺を歩いているのを見つけました。
しかし、レオンがルイのもとに着く前に、なんとルイは川に落ちてしまいます。
レオンは驚いて何度も吠えたあとに、川に飛び込んでルイを助けに行きます。
レオンはけんめいに泳ぎ、ルイを咥えて無事に川から出ることができました。
川の周りには子供が溺れたところを見た人たちやレスキュー隊が集まっています。そしてその中にはルイの両親もいました。
二人に内緒で家を出たレオンは、叱られないかと心配しましたが、夫婦は泣いてルイとレオンの無事を喜びます。
レオンも夫婦が喜んでいるのを知り、とびはねて喜びました。
ルイを助けたレオンの話はあっという間に町で話題になって、警察のおじさんからたくさんのジャーキーをもらったり、地元の新聞に載ります。
新聞の見出しには次のようにかかれていました。
"スーパー犬(ワン)、おおてがら"
おしまい
スーパーワン 入谷慶 @iriyakei028
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