第12話 エクスポージャーな二人の行方 お約束の先へ編【R-15】

 ☆???視点☆


 こちら県庁前。カメラセット完了。音声、画像ともに良好なり。

 遠隔操作システム、起動! 電源オン!

 ふふっ。本人には「セキュリティの為」と言いくるめてあるし・・・


 起動された遠隔地のパソコンは、ビデオ通話アプリを自動起動。

 こちらに、現場の映像が送信される。

 そしてこちら(県庁前のLIVE映像)も、向こうに映る・・っと。


 ほほぉーう♪ いいねえ、何かオモシロイ事になってんじゃない。

 しかしなあ・・・あの第一戦では、敵に余裕を示した手前はあるけど。

 理屈では「それが最適解だ」と分かってはいても・・・なんかモヤるなあ。

 最後に(自らが)全てを手に入れるとはいえ・・・ねえ。


 さて、どうしようか。放っておいてもそれはそれでいいけど・・・うーん。

 迷いながら、引き続きモニターを注視し続ける・・・・

 ーーー…★


「んしょんしょっ。熱くて・・脈と、湿り気を感じるわね。

 にぎっ・・半年分の我慢、ここで解消してあげるんだから・・・

 

 んー。突っ張りが引っかかって、取り出せないわ。

 ちょっと巨大すぎじゃないかしら・・・えいえいっ!」

 「ちょ、普通に痛いから。無理やり引っ張らないでよ、折れるからあぁ!」


 俺がそう言うと、手を離して、こちらの目を見据える。


 「焦ってゴメン。じゃあ・・ハルキくんの方から出して見せて。

 その、使うの・・好きな場所でいいからね。遠慮しちゃ駄目よ?」


 そう訴える哀川さんの口、手、脇、胸、おへそ、膝、足背に目線をやる。

 ああ、もう考えることなんてやめたい。理性さんも正月休みだし。

 耐えてきた欲の証を吐き出したとして、それは彼女の望み。


 「あの・・その前に、が欲しい、かな。いい?」

 「・・え? のこと? いいけど・・・

 でも、ハルキくんが自分から欲しがるなんて・・ちょっと予想外よ。」

 「今はさ、ちょっと緊張してるんだ。でも毎回、を貰う度に、いつのまにか癖になって・・変なスイッチが入っちゃうんだ。

 そしたらきっと、心のままに触れ合えると思うから・・・」

 

 哀川さんは、苦笑しつつも頷いて。

 俺は、上着を脱いでタンクトップ一枚になって。

 俺達は立って、真正面から見つめ合う。

 

 彼女の氷の瞳は今や、澄んだ渓流を思わせる輝き。

 もうあと少しで、キスが出来る距離。

 彼女の顔が近づき、俺は目を閉じる。そしてーーー


 「かぷっ♡・・・んうっ・・・あむあむっ♪・・ちゅ・・ちゅ・・れろ・・じゅ・・ぷはっ。」


 俺のから、口を離した。

 唾液が、細い銀色の糸を引いて離れる。

 

 ・・・そう、これはキスじゃなくて。

 俺の肩を、する儀式である。

 ハグよりもキスよりも回数を多く重ねてきた・・そんな俺達の「定番」である。


 「ぺろっ・・ふぅ・・ぶるるっ。 ふふ、やっぱりコレがないと、落ち着かないわね。

 でもハルキくん。生意気にも、耐性がパワーアップしちゃった。

 初めて噛まれたときなんて、息を切らしてへたばっていたくせに。むぅ。」


 「ぱ、パワーアップしたのは、哀川さんの噛み方のほうだよ・・・

 緩急つけたり、舌を使ったり、吸い出したり・・・

 前と同じと思ってたら、とんだ伏兵を踏んだ気分だよ・・・ぜえぜえ・・」


 俺はゾワゾワとした感覚が背中を這い回り、身震いがする。

 でも、それは決して嫌じゃない。回数を重ねるごとに思う。

 一方、哀川さんはまだ余裕のある、悪戯っぽい流し目で答える。


 「ふふっ。

 前まではね、噛み噛みすると・・心が落ち着いて、よく眠れたのよ。

 噛む度に。黒くて嫌な感情を、前歯に込めて吐き出してた。


 でも今はね。

 『アタシのこと、受け止めてくれてありがとう』って思いながら噛んでるの。

 ハルキくんエネルギーが流れ込んで。

 お腹のマンナカで『キュンっ』てして、もっと欲しくなっちゃう。

 プログラム上、最後まではいかないけど・・ね、今度はがいいな・・・♡」


 潤んだ瞳で、自身の唇に、人差し指を当てるポーズ。

 ・・だよな。今は。

 自分の本心に正直に。

 彼女の望みに応えたい。

 俺の方からも歩み寄ってーー


 「ん・・・ちゅ♡ ふふ、口同士なんて、クリスマス以来よね♪

 さ、あの時べろちゅーとおんなじ所まで、いこ?」


 もういっかい。

 まだ、舌は入れない。

 

 キスしながら、首を傾けて角度を変えたり。

 啄むようにちゅ、ちゅと繰り返したり。

 重なり合う時間を長くして、相手の体温と火照りに、身を委ねたり。

 初キスがゲロチューだった事を塗り替えるように、気持ちを込めて。

 まとわりつく過去カルマを上書きしていく。


 「「(やっぱりこれ・・いいなあ。

 お互いに『好き、大好き』って言い合いながらできたら、もっと良いのに・・)」」


 その「好きだと言えない0.1歩」を詰めるための、エクスポージャー計画。

 もどかしい。でも、間違いなく幸せを感じる数分間。

 碌な事が無かった人生の中で、巡り会えた運命。

 哀川さんも同じ気持ちなら、嬉しい。


 「ぺろっ」

 哀川さんが俺の唇を舐めて、息継ぎをする。

 悪戯っぽくもあり、艶かしさは増し。


 「あのね・・・舌、優しく絡ませるように、お願い。

 あんまり激しく吸われるの、まだちょっと怖いから・・・」


 それに頷く。前回はちょっとがっつき過ぎちゃったもんな。

 あの時は理性さんも休みじゃ無かったのに。

 哀川さんの蠱惑、恐るべし。


 もういっかい。

 軽く唇を合わせる。

 俺の手は、哀川さんの肩越しに背中に。

 哀川さんの手は、俺の腰を経由して背中に。

 「んふっ・・」と吐息を漏らしつつ、布越しじゃない感覚を、掌に感じ合う。


 おずおずと紅い粘膜を差し出し、唇の門を軽くノック。

 門に隙間を確認すると、そこから割り入れる。

「ん・・」

 哀川さんは呼応し、ざらついた先端を差し出す。 


 脳を突き抜けそうな、荒ぶる熱の渦中。

 ぴちゃぴちゃした水音、空気要らずの交錯。

 優しさを意識して、混ぜ込むように注入。

 くちゅくちゅへと融解、歓喜のたうつ動脈。 


「ぷはっ・・ハルキくん♡ クラクラするわ・・もっかい、して。」

「いいよ。俺も、欲しいから・・・ちゅ・・・」




 ーーー汗ばんでいく背中にしがみつき、あるいは撫でて。

 目の前の愛しさに溺れていく。落ちていく。

 気づかないままで。


 パチ・・ジッ・・ンンゥイィイン・・・


 忍び寄る電波。受信、点灯。

 知らされなかった機構。回路の静かなる唸り。

 善なるヴェールに覆われた、無機質な眼に・・・

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【二次創作】哀川さんはアリエナイ正月を過ごしたい 殉教@公共の不利益 @jyunkyo4444

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