第11話 エクスポージャーな二人の行方 妄想力検定編【R-15】

「私もハルキくんも、『最後まで』に躊躇いがあるなら・・叡智な事、少しずつ重ねていけばいいの。

 ふたりのしたいコト。欲求を素直にね、口にしあって。

 本番以外の色々な『訓練』や『準備』をしていく。いつかお互いが助かって『その日』を迎えるまで。

 そんな叡智のエクスポージャー、どう・・・かな?」


 あう、殆ど生肌で密着されて、吐息まで間近で感じて。

 興奮と自制の狭間で、上手く頭が回らない!

 つまり・・・『お互い意識した上で、叡智な遊びを、0.01歩ずつ重ねていく』って事か。

 具体的には、どこまでいいの? と疑問が浮かぶ。


 「そうね。最後までしなければ、殆どの事はいいと思うわ・・・あまり痛いのや、酷いのは嫌だけど。アタシも・・ハルキくんが相手なら・・うん、してみたいコトあるし。」


 理性さんが休暇中な分、妄想くんはオーバーワークを始める。


『ふふっ、ハルキパパってまるで、大きな赤ちゃんみたいね。・・・痛ぅ!

 もう、乱暴にしたら駄目よ。そうそう・・もう、夢中でちゅぱちゅぱして可愛いなあ(なでなで)、何も出ないけど、好きなだけ味わって、ね・・・♡』


『そ、そんなとこをジックリ見ちゃって・・男の人にはない部分だし、興味深いのは分かるけど・・赤面しちゃうじゃない。あ、指・・ちゃんと優しくしてね。まだ開通してない道なんだから・・・ひ、広げて覗かないでってばぁ・・・あうぅ\\\』


『えへへ〜ミウはね、パパのニオイ、こゆくてスキスキなのぉ・・頬ずりぎゅ〜♡

 あ、ヘビさんが・・おっきいアオダイショウさんになっちゃった。なでなで♪

 ミウね、喉乾いちゃったの。今日もパパのヘビさんじゅーす、タップリゴクゴクしたいなぁ(うるうる)・・あーん、かぷっ。』


『ふふっ、ハルキくんってば、情けない顔だなあ。まるでいつかの駄目親父みたい♪

 こーら、動いちゃ駄目。足は加減が難しいし、潰しちゃっても知らないわよ?

 こうやって、グニイッ!って圧をかけると・・もう、スッゴク反発しちゃってるね。

 泣き顔を晒して、惨めに痙攣して、無様に弾薬、空打ちしちゃえっ、ホラホラッ!!』

 ーーー…★


「・・・・・・・・・え。

 

 正気、なの?

 うぅ・・・・・うん、そっか。いーよ、叶えてあげる。

 ちょっと引いたけど・・・その妄想力が逞しすぎて。

 

 私の貧困な発想だとね。

 もうちょっとロマンチックに、お互いに抱き合って、優しく触れ合ってまさぐって、愛を囁きあって、時々舌を絡めて・・・とか。

 そんな事しか思いつかなかったの・・・うん、なんかゴメンね。」


 欲求、素直に言ったんだけどな・・・いやむしろ、俺が謝りたいです。いっそ『ド変態、付き合ってられないわ!』って非難してくれた方が、まだ良かったよ!


 でもさ・・初めて会った日みたいに、自棄になって『もっと傷つきたいから、キミに汚されたい』って理由じゃないよね? そこは、ちゃんと確認しないと駄目だから。


 「安心して。もう、そんな気持ちは無いの。

 妹の美晴ちゃんにだって、同じ過ちを犯して欲しくないから。

 姉の自分が自棄になったら、示しがつかないじゃない。


 アタシだって、もっと触れ合っていたい。ハルキくんにぎゅってされると、ほっとするの。

 好きになっちゃイケナイのに、想いが溢れてきて、放出はきだしたくなるの!

 

 それに、返せていない恩だって返したい!

 この半年の間、私に無償の気持ちと、行動を示してくれた事も!

 今まで思わせぶりなことばかりして・・ハルキくんの事、ずっと我慢させちゃったんだから・・・・えいっ!」


 6月・・初めて『キミはアタシのこと、好きになっちゃダメだぞ♪』の言葉とともに、鼻先をつつかれた事があった。

 でも今は、同じパワーの指が、を弾いた!


 「・・・やっぱり。スッゴク我慢しちゃってる鼓動、指先に伝わってくるもの。

 今すぐ土下座したいくらいに、申し訳ないわ。

 せめてアタシが・・し、絞って解消させなきゃダメ、よね・・さわさわ・・」


 下着姿で上目遣いの哀川さん。あの頃のからかいも、今は感じられない。

 情欲に潤んだ瞳だけど、肩や手つきは、少し震えていて・・・『触れ合いたい』『でも、ちょっと怖い』の狭間で、無理させちゃってるのが分かる。

 そりゃ、俺だって流されたい。別に、最後までするわけじゃないし。

 きっと色々と、お互いラクになれる道だから・・・


 「今日は、神様の前で誓って。

 北海道遠征の時も、美晴ちゃんに『一生幸せにします』って誓って。

 ハルキくんの言葉も想いも、私を幸せにしてくれた。

 

 でも『一方的に与えるだけの幸せ』なんて、いつか破綻すると思う。

 あの親父だって、『一方的な愛』を要求した挙げ句、『相手を幸せにしよう』という考えも持てずに、落ちぶれたんじゃない!

 だから、ハルキくんの欲求を叶えて・・それで対等に近づきたいのっ!」


 哀川さん・・・そんな考えがあったのか。

 自分が「ダメ親父の同類」に、落ちる事への恐怖・・・一応、血は繋がっているし。

 ーーでも、そうとは限らないと思う。

 

 例えば、親への恩返しって「今すぐ」ではなく、「出世払い」が多い。

 返すための原資を稼ぐにせよ・・時間をかけて、力をつけてからだろう。 


 やや特殊な例だと。

 上に住む奏太さんと唯花さんも、最初は「一方的に与える」要素があったらしいが、今ではとても仲睦まじい。

 同じ時間を重ねて、少しずつ変わっていけばいいんだ。

 

 「哀川さんとは、ずっと一緒にいるんだし。返すチャンスはまだ多いと思うよ。

 今はもう、美晴ちゃんに希望を与えられるくらいに、哀川さんは強くなったし・・これからは、もっと強くなれる!


 それとも『これは刹那的なカンケイだから、早く借りを返したい』と思ってーー」

 「違うわっ!!」


 言い終わる前、間髪入れずに返される。

 

 「でも・・家事にしてもハルキくんに教えてもらって、やっと戦力になって。

 辛い・・辛いの・・・『対等じゃない』という重圧に、押しつぶされちゃいそうで・・・」


 涙目でうつむく哀川さんに一瞬、何も言えなくなってしまう。


 「だから・・・私が出来ることを・・心から・・し、してあげたいのっ!」


 ーー!! 哀川さんの、桜色のネイルを塗った綺麗な指が、ファスナーに掛かり、引き下ろす。

 乱暴に手を入れ引っ張り出そうとする、焦燥の暴走。

 頭の回路、鳴り響いてる警告アラート

 脳の中枢、注がれる蜜で漏電ショート

 俺はーーーー

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