《改訂版》『消えないで――愛する家族を守りたかった』
コウノトリ
幼い私の冬の思い出
私の住む地域では、冬になると一面が真っ白になる。その白い世界の中で、私は家族を作った。
「みんな、ずっと一緒だよ」
リボンを飾りつけたり、マフラーを着せたり、一緒にオシャレを楽しんだ。
「お父さん、写真撮って」
「いいよ……ハイ、チーズ」
――パシャ
撮れた写真は着飾った家族と私が笑顔で写っていて嬉しい。胸が高鳴って、お姉ちゃんに見せる
「家族と一緒に写真撮ったの!」
「うん、よくできてるね」
「でしょ、みーちゃんが作ったの」
「すごいね、みーちゃんと同じくらい身長があるね」
こんな幸せがずっと続くと思っていたのに――
家族ができてから二週間、一番大きかったお父さんが崩れた。お父さんを治す方法が私には分からない。
「お父さん、お父さんが崩れちゃった」
「お父さんが崩れたって、崩れてないけど……」
「お父さんが崩れちゃったの!!」
「そんなに怒らなくても、周りから取ってきて直したらいいよ」
――数日後
あれからも、次々と他のみんなも崩れては治していたけど、だんだん体がケガまみれで可哀想になっていった。
「治せなくなった」
「また来年に作ったら?」
「治せなくなった!」
「崩れた子を使って直したら?きっと家族のために使われるんだったら許してくれると思うよ。」
「……」
――数日後
「消えないでよ……」
確かにいたはずの家族が、今ではもうさーちゃんだけになっちゃった。
まるで愛する妹を守るように、他の家族は一人ずつさーちゃんに寄りかかるようにして消えていった。
私はそんな家族の想いを汲んで、さーちゃんが消えないように必死に守り続けた。
でも、さーちゃんの体はだんだん小さくなって、私の腰の高さまであった身長は手のひら二つ分まで小さくなった。
私の目の前から今にも消えそうで――
――絶対に守るから
私はあっちこっちに走り回って探した。
さーちゃんが少しでも長く生きられるように、できる限りのことをして。
でも、どれだけ頑張って探してももうどこにも、さーちゃんを救える手立てなんて残されていなかった。
今日も太陽がさーちゃんをいじめる。
朝、手のひら二つ分の大きさがあったさーちゃんは一つ分までキラキラ輝きながら小さくなった。
――ねえ、どうしていじめるの?
家族を奪っておいて、どうしてまだ、さーちゃんの命まで取ろうとするの?
次の日の朝、私はまたさーちゃんに会いに行った。
でも――そこにさーちゃんはいなかった。
代わりに残されていたのは、家族の遺品と、さーちゃんがいつも身につけていた小さな飾りだけ。
どうしこんなことができるの。
どうしてさーちゃんまで殺したの――
「そんなに泣かなくても……また来年、作ればいいよ」
そうじゃない!そうじゃないの!!
お父さんのバカ。
私の作った家族が消えても、心の中に残る記憶は消えない。
冬が終わり、春が始まる。
それでも、みんなと過ごした日々の思い出は、今もずっと私の胸の中で輝き続けている。
◇
元の話は『消えないで――小さかった私の冬の思い出』
https://kakuyomu.jp/works/16818093090926878992
こっちの話はできるだけ短くすることにこだわって、最後まで雪だるまのことを家族って言っていることを隠そうとしたのですが、逆に分かりにくくて。
なんか人間の家族がどんどん消えていくみたいなホラーになってしまっている。
《改訂版》『消えないで――愛する家族を守りたかった』 コウノトリ @hishutoria
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