置かれた場所を自ら変える
- ★★★ Excellent!!!
まず作品世界を知るための前提知識として、「箱庭療法」は現実の精神科で行われる療法であり世界中で活用されていることを記します。その目的についてネット上の資料から引用します。
箱庭療法は当初は主に子ども用のセラピーとして使用された。その理由として、子供や思春期の人間は複雑な概念や言語の構成が苦手であり、どちらかというと、遊びや象徴的な表現の中で、自己表現をすることが多く非言語的な手法による治療は有意義との意見がある。
(Wikipedia 「箱庭療法」日本語版 最終更新 2021年3月15日 (月) 07:05(UTC) から引用)
正にその通りです。初見では突飛に見える本作の構成は、上の一段落を前提として読むと全く理にかなったものであることが分かります。
Wikipedia にお株を奪われたようで、評者には付け加えることはなく……と負けを認めるのも悔しく、蛇足を加えさせていただきます。
箱庭を作る子どもと、箱庭に置かれる人形や動物のオブジェ。子どもは物を置く箱庭の創造主。オブジェは置かれる側。では、子どもは現実世界では置く側? いいえ、置かれる側です。
現実には大人に振り回される子どもが、箱庭にオブジェを置く。なら、自分をどこかに置けるなら、どこに置きたい?
箱庭療法は少年に問うていました。少年は悩み、そして…… 結末を大人が語るのは乱暴です。少年自身に語ってもらいましょう。
作品を読めば書き留められていますから。