《完結》消えないで――小さかった私の冬の思い出

コウノトリ

第1話 私の冬の思い出

 ――消えないでよ


 お父さんまもるお母さんあいさーちゃんこーくんお兄ちゃんアーサーお姉ちゃんあかね


 あんなにいたはずの家族が、今ではもう一番下の妹・さーちゃんだけになっちゃった。

 まるで愛する純粋無垢な妹を守るように、他の家族は一人ずつさーちゃんに寄りかかるようにして消えていった。


 私はそんな家族の想いを汲んで、さーちゃんが消えないように必死で守り続けた。

 でも、さーちゃんの体はだんだん小さくなって、私の目の前から今にも消えそうで――。


 ――絶対に守るから


 私はあっちこっちに走り回った。

 さーちゃんが少しでも長く生きられるように、できる限りのことをして。

 でも、どれだけ頑張ってももうどこにも、さーちゃんを救える手立てなんて残されていなかった。


 今日も太陽がさーちゃんをいじめる。


 ――ねえ、どうしていじめるの?

 家族を奪っておいて、どうしてまだ、さーちゃんの命まで取ろうとするの?


 次の日の朝、私はまたさーちゃんに会いに行った。

 でも――そこにさーちゃんはいなかった。

 代わりに残されていたのは、家族の遺品と、さーちゃんがいつも身につけていた小さな飾りだけ。


 燦々と照らす太陽が妬ましい。

 どうしてさーちゃんまで殺したの――。


 私の作った家族が消えても、一年は続いた。

 冬が終わり、春が始まる。

 それでも、さーちゃんと過ごした日々の記憶だけは、今もまだ私の心の中で消えないまま、そこに残っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

《完結》消えないで――小さかった私の冬の思い出 コウノトリ @hishutoria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画