第6話 悪の組織劇場 第1幕 悪の総統、瀕死になる
エンザーイ・ツインズからの周辺調査の定期報告を総統指令室で受けるゴクアーク。
報告書を事務方の戦闘員から受け取るとその書類に目を通す。
だが、わずかに書類を近づけたり離したり目を細めたりをしている。
その行動が元来のイカツイ顔をより怖く見せている。
「ゴクアーク様、どうなさいました?何か不備でもありましたか?」
事務方の戦闘員が、不審な動きをするゴクアークに対して何かしでかしたのかと心配していた。
「ん!いや何でもない。ちょっとな私の問題だと思うので心配しなくていい。報告書は後で目を通すとしよう、不安にさせてすまんな」
と言うと報告書をサイドテーブルに置くと事務方の戦闘員を向く。
「大丈夫ですか?体調がすぐれないのですか?」
と心配そうに見つめて来たのだ。
「ヌワハハハハッ!大丈夫だ。いらぬ心配をかけた。報告書もよくかけている、手間をかけさせていつもすまんな」
と笑い声をあげ、事務方の戦闘員を安心させていた。
「いえ、そんなことはございません。ゴクアーク様は我々の恩人です、お役に立てて光栄です」
「そうか、すまんな。これで本日の業務は終了になるのかな?」
「は、そうなります。本日もお手数をおかけしました」
「ああ、ありがとう。キミもきちんと体を休めるのだぞ、キミのような有能な同志に何かあると我が組織の損失になるからな」
「嬉しゅうございます、ゴクアーク様。それでは失礼いたします」
と言うと事務方の戦闘員は総統指令室を出る。
ゴクアークは、事務方の戦闘員が部屋を出たことを確認すると自身も部屋を出る。
本部は、戦闘員たちの宿舎が隣接している。
もちろん、ゴクアークの邸宅もそこにある。
彼は、自身の部屋に入るとそこは一般的な家庭のリビングルームあった。
悪の総統の服装でいる彼が見事に浮いていた。
彼はサクッと上下スエット姿になり、リビングのソファーに座り手に持つ報告書を見つめる。
だが、先ほどと同じような行動を取る。
そこに美人と言う言葉がにある女性が来た。
「何してるんですか、怖い顔で不審な行動すると怪しさ全開ですよ、お父さん」
そう、この美人さんは、ゴクアークの奥さんで普段はマスクをかぶっているアクラーツその人である。
見た感じでは完全に美女と野獣である。
これでラブラブなのだ。世界はわからないことでいっぱいである。
「人を不審者みたいに言わんでくれ。今は報告書を読んでいるところだ」
と言いながら目を細める。
その姿を見てピンときた奥様であるアクラーツは、含み笑いをしながら
「ねえ、お父さん。ひょっとして老眼で見えにくいの?」
と言う。
この言葉がゴクアークに突き刺さる。
「ななななななっ何を言っているのかね、母さん。ただの疲れ目だよ、疲れ目」
と脂汗を描きながら、手に持つ報告書が小刻みに震えていた。
「フーン、疲れ目にねえ。それって老眼の始まりだよね」
と、笑顔で言い放つ。
その言葉がさらにゴクアークに突き刺さる。
「そんなことはない、異世界に来て激務が続いただけだ。ただそれだけだ」
と自分に言い聞かせるように言う。
その姿にニマッと笑いながら
「もう観念したら、お父さんもいい加減歳なんだから。老眼にもなるわよ、いつまでも若いつもりでいたら、それはそれで気持ち悪いわよ」
追い打ちをかける。
突き刺さる三つ目の言葉でゴクアークのガラスのおじさんハートは砕かれる。
彼の奥様からの口撃がクリティカルヒットに変わる。
ゴクアークはソファーの上で三角座りをして涙目になっていた。
厳ついオッサンが涙目で凹んでいる姿は結構不気味である。
その姿を見てアクラーツは可愛いと心でつぶやく。
そして、家に帰ってきた娘のシンラーツがその姿を見て
「いかつい顔で凹まないでよ、逆に怖いわよ。いい年して何してんのよパパ」
と言う。
砕けたガラスのおじさんハートはこの言葉ですりつぶされたのだった。
〇これは悪の組織の方々の普段を描く一幕です。
悪の組織の異世界侵略 団栗山 玄狐 @5049
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