スノードームを割る

そうざ

Breaking a Snow Globe

 ’.❆  ・。 : *:  ❅ 


 一面に舞う雪。


 。* …. ・;: *+゚~゜・:  ・゜・ .❆ : *: .


 蒼い静寂と心地好い揺蕩たゆたい。


 ❅.:。.~: .。  ;:*+゚ 。・゚…:*:゚  .”₊~❅: ’ *:


 眠りに落ちる時の吸い込まれるような感覚。


 ; :*+゚ … *~・:゚  .”₊ ❅.:  。 ’ *: ₊~


 私はついさっきまで葬送の場に居た筈だ。

 故人を前にすると、いつも同じ考えが頭をかすめる。

 一年前に死んだ人は半年後の寂しさを知らない。

 半年前に死んだ人は一月ひとつき後の哀しみを知らない。

 つい昨日に死んだ人は今日のよろこびを知らない。

  *+゚~゜^.:  : ’ *: ₊~ ❅.:。.~ ^

 この世界は何かに似ている。

 真球の硝子の中を雪片が舞うシンプルなスノードーム。

 貧しい母子家庭にいつの間にか存在していたスノードーム。

 ぼんやりと雪を眺めているだけで退屈な一日が過ぎた少女時代。

  ゜❆~゜゚・:  ・゜*+゚ 。・゚・ ^・: ・ 

 いつからだろう。

 母が留守勝ちになった頃だろうか。

 知らない男達が家に出入りするようになった頃だろうか。

 暗い衝動に囚われている自分に気付いた。

    ゜・ .❆ : *: .

 ――スノードームを割ってみたい――

           ~:*゜… .”₊ 。

 一向に腐りもしない、どろりとした液態えきたいの正体を知りたい。そもそもどうやってドームの内側に閉じ込めたのか。きらきらとした雪も気になる。永遠に溶ける事のないちりには、一体どんな秘密が隠されているのだろう。

   ^ ゜ :*:゚  .”₊~ ❅ ~+゚゜ ・:  

 それからと言うもの、私はスノードームを頭上に翳しては夢想するようになった。

 硝子と液態と塵が混然一体となって飛び散ったら、どんなに気持ちが良いだろう。

    。 ・゚❅ :゚~  :* 。^・ :゚

 でも、私はそれを実行に移さなかった。内向きの因果律が私を思いとどまらせていた。

 球形の世界は私の手の中にある。だから、いつだって簡単に壊す事が出来る。だけど、一度世界を壊してしまったら、もう二度と壊せなくなる。もしも、壊したいと思った時に壊せる世界がなかったら、どうしよう。


   ~※ *。:゚ .” ₊*~ , ❅゜…

    ――夢を見てるのよ――

   ・ .❆ : * ^✧'・゚ :*  :゚ ~


 私はスノードームで微睡む白雪姫。

 夜な夜な鏡に向かう母は王妃のかお

 待てど暮らせど姿を見せない王子。

 七人の小人は、代わる代わるやって来たかと思えば、動けない私に寄ってたかって追いすがる。


       : ’ *: .。    .。

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   :゚❅. :。.。 …   : .。 ⋰ ;:*+゚

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    …    * .”₊  ゜

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   ;:~* +゚  ❅.  ;: *∵ *…

      .。   ’   .. : 。~  : ’ *:


 曇天の空に雪が降り始めた頃、母が死んだ。遂に死んだ。私の心に、躰に、呪詛のような疵を刻み付けられるだけ刻み、無様に逝った。

 因果律は破られた。

 今こそスノードームを割る時なのだ。

 王妃と本当に決別するには、小人共から逃れるには、囚われの白雪姫を目覚めさせるには、それしかない。

 私はスノードームを振り翳し、母の墓石に投げ付けた。


      ※  \    /゜❅ ‥

     \ "  : ×  *:゚― ⋰。

    *:゚。  × \  ‥ /  ∵-  '

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     × ⋰-  ,  "  '。⋱.

       , ※. / ゜ \   *


 かたくなだった殻に無数の亀裂が生じ、液態は猛る海嘯つなみとなり、塵はあまねく四海へと飛散した。

 球形の世界は、完全にその形を失った。

 音が消え、色が消え、命が消えた。

   

      …  +゚ ※ ゜゚・:  .

   : *: .。 ・゚: *:゚。  .:*・~゜゚ :*:゚❅. 

    .:。 ~:゚❅.: 。.。 ― : .。 ;:* +゚

   .:*・~゜゚*。  ・゚:゚~:  *:゚.  

       .:。^  , .。 ’”


 雪が舞う。

 私は私の世界を壊してしまった。

 違う――私の飯事ままごとに過ぎないと思っていた世界は、誰の物でもなく、誰のものでもある、世界のみなもとだったのだ。


   : * ~:^ .❅ ;… 。~ *+゚ ※

 散り、散りに ❆. :。 なった・私が :~ ∵

  。深い…海の闇―へと、⋰堕ち*~て行く.

     ∵ +゚ : * : .⋱ ‰

       ,  ※  ;: * 

         ∵


 私も、新たな生命をはぐくむ、かてとなり、いつの日か、次の世界に、生を受ける、の、か――。


      ・゚~:*:゚  .”₊❆  ❅.:~ : 

    ’ *: .。  *. :   ^  .”₊

  。    . ・  ※  ;: *+゚゜゚・:

  その時が来るのならば眠り続けよう。

     .❆ : *: .  ∞  ∴; ^

   ;:~ *+゚ ❅.  ;:*+゚  : ’ *: .。

       ⋱    .。

     ’.❆  : *~:   ‰ ・゚:  

      *:゚.:^。.。  .:、   

    白雪姫のように待ち続けよう。

     : .。   ;: *+゚。 . ・;: 

       ゜゚・ ÷

  :゚❅.:。.。  ’”   :  ・゜゚ .❆ : *: .

     ;:~*+゚  ❅.  ;

       、 *‘    :*+゚ 。

     スノードームの中で――

       ^   :゚❆.。

     *・゜^  :* :゚~ ※.

 

        ・. . ❅

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