猫ちゃん施設

トシキマイノリティーライター

第1話 猫ちゃん施設

僕の住むこのマイノリティー施設に、猫たちがたくさんいる。クーちやん、マメタロウ、トラちやん、クロちやん、ミケちやん、そして、たまに現れる野良猫たち。

まるで、障碍者の施設と言うより、猫ちゃん施設だ。

現在は、猫たちの餌やりは、施設のドライバーさん達がしている。


以前は、僕が、Kさんに頼まれて、11年間、猫たちに餌をやり続けた。

僕は、施設の農業班のメンバーたちに、「猫パパ」と呼ばれていた。

「パパに餌をもらいなさい。」

メンバーたちは、猫たちに、そう言った。

ある時、ミケちゃんが、子猫を産んだ。そしたら、あるメンバーが、

「ミケの子猫の顔は、パパにそっくり。」

僕が、そんなことをするはずがない。

ミケちゃんは、トイレの天上の上に4匹子猫を産んだ。走り回る子猫たち。

僕は、梯子をかけてやってやったら、子猫たちが梯子を伝って降りてきた。

「施設の猫たちと仲間入りだ。」

僕は、Aちゃん、Bちゃん、Cちやん、Dちゃんと名付けた。

そして、僕は、ミケちゃんに、これ以上、子猫を産まないように、避妊手術をすることにした。僕は、女の子のNさんと、募金箱を作った。

「ミケ募金」

施設のみんなが募金をしてくれた。合計1万5千円集った。日曜日、女性スタッフSさんと、車で、動物病院にミケを連れて行った。ミケを籠から出すときに、僕は、ミケに爪で腕をひっかかれた。鮮血が腕から、ぽたぽたと流れた。次の日に、僕たちは、ミケを迎えに行った。手術は、無事に終わっていた。費用は2万5千円だった。僕は、足りない分をポケットの財布から出した。


ある時、トラ猫が施設に現れた。いきなりみんなになついている。スタッフHさんが、呼んだ。

「ジョン!」

猫は、振り向いたので、僕は、名前を、ジョンと名付けた。

ジョンは、施設のボス猫みたいだった。のしのしと歩く姿は、貫禄があった。

ジョンが、パトロールから戻ってくると、みんな笑顔になった。夕方になると、ジョンは、グループホームの屋根に登って、静かにあたりを見まわした。H君が、言った。

「ジョンは、神様みたいだ。まるで沖縄のシーサーみたいだ。」


ある時、トラ猫が一匹の子猫を産んだ。子猫は母猫に捨てられた。雨降る夜中を1匹で、ニャー、ニャー泣いて、さまよっている。僕は、子猫を抱き寄せた。餌を与えて、怖がらないように、いっぱい身体を撫でてやった。20分で、仲良くなった。僕は、クーちゃんと名付けてやった。クーちゃんは、施設の誰からも愛された。美しい立派なオス猫になった。やがて、女性ドライバーにMさんという方が、おいしくて、高い餌を与えていたら、クーちゃんは、Mさんになついた。Mさんが、車で出勤すると、クーちゃんは、弾丸のように、一直線に走って行って、車の中にもぐりこんだ。H君は言った。

「まるで犬みたいな猫だね!飼い主に向かって、一直線にすっ飛んでいくね。あんな猫は初めて見た!」


ある時、僕のお金が大変になった。猫に餌も避妊手術もしてやれない。僕は、ドライバーさんのところに行って、頭を下げた。

「どうか、猫の面倒を見てください。お願いします!」

僕の11年に及んだ猫の餌やりは、終わりをつげた。ある時、女性メンバーYさんが、僕のところにきていった。

「猫は魔物よ!」


僕は、猫は神様だと思っている。施設の平和を守っている。今日も明るい陽射しが降り注ぐ施設に、猫さんが神様のように、歩き回っている。


                           END.

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